栄養学的には「朝食が最も充実している」ことが望ましい
健康のためには規則正しい生活習慣が基本となる。そして、規則正しい生活習慣は規則正しい朝食の摂取からスタートする。私たちの体内には、身体機能がほぼ24時間のリズムで動くようにコントロールするための「時計=体内時計」が備わっている。朝、太陽の光を浴びることと朝食を食べることで、この体内時計がスタートすると考えられている。
そのため、毎日決まった時間に朝ご飯を食べることは健康生活の基本中の基本である。にもかかわらず、日本人男性の朝食欠食率は約14%、女性のそれは約10%もある。とりわけ20代から40代の男性では4人に1人がまともな朝食を食べていない。【※】働き盛りのビジネスパーソンがこういう状況では、健康的な生活どころか、本来持っている能力を仕事に発揮できないのではないかと、私は危惧する。
朝食は「これから始まる一日の活動源」なので内容的には「三食のうちで最も充実しているべき」だという主張もあるし、「三食の食事内容をできるだけ均等化すべき」だという栄養学者もいる。しかしそれがなかなかできない。日本人の食習慣としては「朝は軽く、昼はそれなりに、そして夜はたっぷり」というパターンが定着している。
一日に三食を食べる人の場合、食事と食事の間の時間は、朝と昼の間が4~5時間、昼と夕の間が6~7時間、そして夕から翌日の朝の間が10~12時間くらいだろうか。夕食から朝食までの時間が圧倒的に長い。プチ断食といってもいいくらい(英語のブレックファーストというのは「断食を止める」という意味らしい)。いくらその間は寝ている時間が長いとはいえ“朝飯前”の身体はエネルギー源や栄養素がかなり不足している。朝食を食べないということは、身体に相当な負担を強いることになるであろうことは、想像に難くないはずだ。なので、朝食こそ「栄養バランスがよく適量」であることが求められる。
しかし、それが難しいことも承知している。もし、このコラムを読んでいる人の中で、このことができている人(充実した朝食を食べている人)がいたら、以下は読まずに、スマホ(PC)を閉じていい。何らかの事情で「朝食を食べてないけど、健康のことが気になる」という人だけ、この先を読み続けてほしい。今回の情報は「できればこのくらいは食べてほしい」~「まったく食べないよりはまだまし」というレベルの朝食情報。
まず食べたいのは糖質食品とタンパク質食品
もちろん、多忙なビジネスパーソンだって、五大栄養素(タンパク質・糖質・脂質・ビタミン・ミネラル)+食物繊維がバランスよくそろった朝食がいいに決まっている。でも比較的ゆっくりと食べられる夕食でさえ、それをそろえるのはなかなか難しい。ましてや急いで食べる朝食では、それは無理な注文。
朝、優先的に身体に補給したいのは糖質とタンパク質。前回も紹介したが、糖質は体内で素早くブドウ糖に変わる。血液中のブドウ糖(血糖)は、脳細胞が利用できる唯一のエネルギー源。血糖値が最も低くなる“朝食前”は、脳細胞が最も働きにくい状態である。朝食で糖質を体内に入れて、脳細胞が効率的に働く環境を整えなければならない。朝食抜きでは、午前中はまともな仕事ができないだろう。
【※】http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/dl/h27-houkoku-03.pdf