2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年12月12日

 この内容は、的を射た良い社説です。

 トランプ大統領の訪韓直前に成立した中韓関係を改善する合意は驚くべきものです。「三不政策」と言うことで、THAADの追加配備はしない、米国のミサイル防衛システムには参加しない、日米韓軍事協力は軍事同盟に発展させない、との3点に合意したと康京和外相は説明しています。マクマスター米国家安全保障補佐官は、「韓国がその3領域で主権を放棄するとは考えていない。外相の発言は確定的なものではないと思う」と述べています。米韓間で今後大きな問題になるでしょう。

 日米韓の軍事協力を同盟に発展させないという点については、日本は憲法改正をして集団的自衛権を行使しうるようにならないと、米国に対しても韓国に対してもNATO5条のような義務は引き受けられませんから、今直ちに問題になることではありません。

 しかし、THAADの追加配備と米国のミサイル防衛への不協力は理解に苦しむ政策です。前線国家として、脅威の評価を間違っていると言わざるを得ません。

 大体THAADは米軍が韓国に配備しているものです。追加にいちいち韓国の事前同意が要るのか、いわゆる事前協議制度があるのかつまびらかにしていませんが、北朝鮮からの韓国へのミサイルを撃墜するためのものであり、それに制約をかけて国を守れるのかと思います。

 米国のミサイル防衛に参加しないというのは実際的に何を意味するのでしょうか。米国のミサイル防衛は、それが中国の核戦略に与える影響が中国に北朝鮮の核・ミサイル開発を抑制させる動機につながると思いますので、韓国は全く不適当な対中妥協をしたと考えられます。

 もし次の朝鮮戦争が起これば、ソウルは火の海になり、100万人くらいの死者が出ると言われています。それゆえに、対北軍事オプションには躊躇せざるを得ないところがありましたが、韓国が敵・味方識別ができず、「バランス外交」を標榜するのであれば、自業自得ともいうべきで、韓国の被害のことを心配する必要はない気もしてきます。

 トランプ訪韓の晩餐会に慰安婦を呼び、竹島のエビを供し、対北の日韓米の軍の共同演習を断る国は、日本の友好国ではありません。今後はそういうものとして韓国を取り扱っていくことが正解でしょう。北朝鮮に対する対応も日米で検討すべきで、日米韓の枠組みで考えることが正しいのか、疑問です。文政権を説得するのにエネルギーを使うより、日本でのTHAAD配備、ミサイル防衛のさらなる開発を、技術的有用性も踏まえ、検討していくべきでしょう。韓国の中国に対する事大主義の伝統は今も根強いです。

 予防攻撃は国際法上違法ですが、Preemptiveな攻撃は必ずしも国際法違反ではありません。北朝鮮が攻撃してきた時には、自衛権で反撃できます。

 北朝鮮は核戦力をかなり高度なところまで持ってくることに成功しました。今後、挑発は控え、経済建設に重点を移す兆候も見えています。挑発がなければ対話などと言うのは北朝鮮の思うつぼにはまることになります。

  
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