ウォール・ストリート・ジャーナル紙が1月3日付で、パキスタンがアフガニスタンで活動するタリバン他のテロリスト・グループに隠れ場所を提供していることに憤るトランプ大統領は正しく、米国はパキスタンの行動を変えさせる必要がある、という社説を書いています。論旨は次の通りです。
トランプ大統領の今年のツイートは、パキスタンは「混乱、暴力、テロのエージェントに隠れ場所を提供し」米国の援助に「虚偽と詐欺」をもって報いているというパキスタン非難で始まった。パキスタン政府は反撃した。しかし、トランプは正しい。パキスタンがタリバンやハッカニーのようなテロ・グループを後援している限り、米国はアフガニスタンの戦争に勝てない。
パキスタンが、米国の同盟国として2002年以来330億ドルの援助を得る一方で、アフガニスタンで活動するテロ・グループを支援していることについては、具体的な証拠がある。それへの苛立ちの表現として、昨年8月、米国は2.55億ドルの援助を保留した。
援助は米国が有する梃の一つに過ぎない。MNNA(major non-NATO ally:非NATO主要同盟国)の指定を取り消すというもっと強力な措置も検討されている。その場合、米国の装備品、訓練、情報共有へのアクセスを断たれることになるのでパキスタン軍には深刻な影響をもたらす。米国はパキスタンをテロ支援国家に指定することも出来る。これには制裁が伴う。既にFATA(金融活動作業部会)がパキスタンに対しテロ資金供与の防止が不十分なことを理由に監視リストに掲載することを警告している。
これらの措置が軽々に取られることはない。米国はアフガニスタンへの補給をパキスタンの港湾と道路に依存している。ロシアとイランとの緊張の高まりのために中央アジアを経由する別のルートの開拓は実現可能性がない。中国はパキスタンを無条件に支持しており、インフラへの570億ドルの投資を約束している。もし、中国に更に依存することを迫られれば、パキスタンは中国海軍にグワダル港へのより大きなアクセスその他の戦略的便宜を与えるかも知れない。
しかし、最も強力な議論は、パキスタンとの関係断絶をすれば、それが裏目に出て宗教的な狂信者による権力掌握を助けることになるかも知れないということである。イスラマバードが過激なイスラム主義者の手に落ちることを防ぐことは、絶対的に必要である。
このことは、トランプがより強硬な路線を選択することが誤りであるという意味ではない。米国はその梃を使ってパキスタンの行動を変えさせるべきである。パキスタン軍首脳部は圧力に憤るかも知れないが、両国関係の断絶は双方にとって危険であり、事態を悪くすることを認識せねばならない。
出典:‘A Game of Chicken With Pakistan’(Wall Street Journal, January 3, 2017)
https://www.wsj.com/articles/a-game-of-chicken-with-pakistan-1515024924