ワシントンポスト紙コラムニストのイグネイシャスが、12月28日付け同紙コラムで、トランプの下でのアメリカは分断が進んでいることを指摘し、国内の分裂が海外の競争相手に対する脆弱性を高めていると言っています。要旨は次の通りです。
私(イグネイシャス)が取材した、経験豊かな元軍司令官の一人は、米国は国内があまりにも政治的に分断されているので、海外の競争相手に対し脆弱になっている、と言っている。彼らが恐れるのは、米国が現在、いざ戦争が必要となった場合に動員できないほど分極化されているのではないかということだ。
トランプに起因する統治の機能不全が懸念される。トランプは近代で最も不人気な大統領だ。世論調査によれば、トランプは、対立的になればなるほど公衆に好まれなくなっている。しかし、トランプは自分の支持基盤の受けを狙い、自らのやり方に固執し、米国に有害な結果をもたらしている。
トランプの支持率は低いまま(38%弱)であるし、ヴァージニアやアラバマなどの重要な選挙で共和党は負け続けている。
12月26日にPew Research Centerが発表した調査によれば、今や、政治的見解を動かすものとして、宗教、教育上の分断より、党派的分断がはるかに重要である。主要な問題についての共和党員と民主党員の差は、1994年の15%から、現在は36%に拡大している。
懸念されるのは、トランプのアメリカにおいては、人々がこうした分断を癒し得ないと益々思うようになっていることだ。6月に実施されたCBSの世論調査では、55%が「異なった政治観を持った人が共存できる」と答えたが、10月には47%が楽観的、55%が和解に懐疑的だった。
トランプの下で分断されたアメリカは、外国にどう見られているのか。Pewの春の調査では、米大統領へのグローバルな信頼は、トランプ政権発足時、オバマ政権末期の64%から22%に急落した。「全く信頼できない」と答えた者は23%から74%に急上昇している。
外国からの秘密工作に対する米国の脆弱性は、1945年の英秘密情報部(SIS)による報告書に鮮明に描写されている。同報告書は、1940年に始まった、米国を戦争に引きずり込んだ秘密工作を採りあげている。
私は、このイギリス安全保障調整局(BSC)についての歴史を30年近く前にレポートしたが、「BSCは、工作を始めるにあたり、米国には多くの摩擦し合う人種、利害、信条の人々が住んでいるという単純な事実を覚えておく必要があった。米国は全体としては富と権力を十分意識していたが、個人としては自信がなく防御的だった。そして、挑戦的に国家統一を求めて無駄な努力していた」との英国諜報トップのシニカルな評価が忘れられない。
トランプは挑戦的なナショナリストで、おそらく統一者たらんと欲していよう。しかし、世論調査の数字は、トランプが、分断と不和のレベルを彼の最も熱心な支持者でさえも懸念せざるを得ないレベルにまで引き上げてしまったことを示している。
出典:David Ignatius,‘One nation, divided under Trump, with perilous consequences’(Washington Post, December 28, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/trumps-divisiveness-puts-america-at-risk/2017/12/28/6cd5b738-ec11-11e7-9f92-10a2203f6c8d_story.html