2022年8月13日(土)

百年レストラン 「ひととき」より

2018年5月24日

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牛肉料理の可能性を求めて

 大正2年(1913)には、大仏通りに店舗を構えた。その際、ビフテキとビフカツの値段は、10銭に改められた。

3階の個室で、神戸牛ロースステーキコース9,000円(税込。以下同)をいただく。前菜2種にも神戸牛を使用。ステーキ200グラム

 「すき焼きやカレー丼など、いろんな牛肉料理も始めました。また、当時あまり利用されていなかった牛モツや端肉を利用し、甘辛く煮込んで饂飩にのせて出すなど、粗(あら)利益の高い商品も開発しました」(宏之さん)

 繁華街の中心が大仏前から新開地に移ると、そちらにも出店。仕入れ場のある長田町にも店を出すなど数店舗を経営するようになった。しかし第2次世界大戦の空襲で神戸は焼け野原になり、戦後は新開地店に注力した。

 やがて三宮の将来性を感じたみき子氏が、夫で2代目の嘉七(かしち)氏に進言。昭和38年(1963)に現在の店舗を開いた。新開地店は昭和63年(1988)に閉じ、今は三宮だけで営業を続けている。

 さて、看板料理の神戸牛ロースステーキコース(写真上)を食べてみた。一口大に切られた肉を頬張る。官能的な甘味が広がっていく。ご飯を食べ、漬物、味噌汁で口の中をリセットし、またステーキ。和の定番との組み合わせが絶妙で、箸が止まらない。

レア状態の牛肉が敷き詰められたお櫃から茶碗によそい、特製出汁をかける。特選黒毛和牛ひつまぶし膳1,814円

 宏之さんが数年前から始めた「和牛ひつまぶし膳」にも感動。鰻のひつまぶし同様に、最後は和風出汁をかけていただくものだ。

 「神戸の人間は京都と違って歴史がないから、新しいものを抵抗なく受け入れる土壌があります。進取の精神に富んでいるんです。でもその一方で移り気だから……。こちらとしてはいろいろ開発を続けて、良ければ残し、駄目なら止めるか改良する。その繰り返しなんですよ。人々の嗜好は時代と共に変化します。時代のニーズを料理に反映させ、寄り添っていきたいです」

 そう語る宏之さんは、現在の出汁とは全く異なるひつまぶし膳用の出汁を開発中。牛肉料理の可能性を追求し続けている。

  
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◆「ひととき」2018年5月号より

 



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