2024年12月6日(金)

したたか者の流儀

2018年4月20日

 過半というよりほぼ全ての海外上場企業の事業年度は1月1日に始り、12月31日に終わる。翻って日本企業は大半が9月中間決算、3月本決算となっている。国の予算が4月1日にはじまるので、その方が便利なのだろう。

 今年も、3月31日で事業年度が終わり、同日に株主名簿が閉められて株主が確定した。債券の場合は、経過利子という考えがあって、途中で売却しても日割りで利子が受け取れるのが原則だ。

(moenez/iStock)

 ところが、株式の場合、丸1年保有していなくても本決算にあわせて、たった1日保有することで、全ての権利が付与されることになる。日本では、株の受け渡しは4日目なので、権利確定日である3月31日の3日前に決まることになる。

 さらに言うと、午後3時ぎりぎりに株式を買い付け、翌日の9時に取引開始時に売却すれば、わずか半日強の保有で、株主としての権利が全て享受できてしまう。

 企業側はその後は、1カ月以上かけて決算を行い、さらに1カ月後の6月中旬以降に株主総会が開催されるのが通例となっている。

 決算発表最速を自慢する企業も散見されるがそれでも1カ月が単位となっている。5月に入って決算が目白押しとなり、東京証券取引所の巣箱に投げ入れるだけの企業や、会見がある企業、記者の取材がある企業など様々だが、その頃には既に保有していた株式を売却している投資家も少なからずいるのだ。その席で、来期は増収増益が予想されるといっても既に売却した株主には意味をなさない。

 既に株を売却し、その後株価は上昇、さらに会社側は自信たっぷりの収益予想を発表するのを見て、ほぞを噛む人も多いことであろう。それが理由というわけではないが、来期の予想を控えめに発表する企業は多い。日本企業の特徴かもしれない。すべて控え目の予想となる。

 その昔「試験は全くできなかったと言っておき、後でショックを与えるさ!」という歌があったが、我らの日本人の精神構造としての典型かもしれない。

 さて、決算も発表され、新営業年度も第1四半期が終わる時期になって株主総会が予定される。

 株主総会は6月29日に行われると思っている外国人投資家がいた。調べると1995年には、3月決算の企業のうち96%が同日に総会を開催していたのだ。理由はただ一つ、外国語に訳すことが難しい職業である“総会屋”が会場にやってくる可能性を排除したかっただけであろう。猛獣に襲われそうな動物が円陣を組んで対抗するのに似ている。その種の株主がいればどこかが餌食になるのだが、連帯して守り抜こうということなのだ。

 1992年には、適正な法規が制定されたが、有力企業である「富士写真フイルム」(現在の富士フイルム)の専務取締役が、反社会的勢力との決別に注力しているさなか、自宅前で刺殺される事件が起きている。犯人とされる人物やそれを指示した人物は逮捕されているが、更に裏には「総会屋の陰」があったと推定されている。


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