2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年5月10日

 トランプ大統領は、イラン合意を批判してはいるが、そこから離脱するかの判断は5月12日を期限に決断する。4月24日の米仏首脳会談では、双方が、立場を譲らず、首脳会談後の米仏合同記者会見では、新たな合意という第3の道の可能性も示唆された。

 その第3の道へのマクロン大統領の決意が述べられたのが、首脳会談の翌日に行われた上記のマクロン大統領の演説である。演説の中でマクロン大統領は、しきりに既存の「イラン合意」が破棄されることがあってはならず、米仏が共に協力をして新合意を目指す必要があると述べている。米国上下両院合同会議場では、アメリカの議員たちから大きな拍手を受けながら、マクロン大統領は、トランプ大統領に対して、改めて訴えた形だ。

 新たなイラン合意の4本柱に関しては、マクロン大統領は、自らが、前年(2017年)の秋の国連総会で提示したものだと述べるなど、フランスは、マクロン政権になってから、積極的に外交を展開している。今回、マクロン大統領がトランプ政権の初の国賓として招待されたのも、昨年7月に、マクロン政権が初の国賓として革命記念日にトランプ大統領夫妻を招待した、返礼の意味もある。

 シリア空爆に関しても、米仏英3か国は共同で対処した。空爆直後のインタビューで、マクロン大統領は、フランスがシリア攻撃をしたのは、化学兵器の使用を止めさせるためであり、今後フランスは、ロシアとも、この件について対話をして行く、と語っている。今まで、欧州の中でも、ウクライナ問題などロシア関係では、ドイツが大きな外交的役割を果たすことが多かったが、今回、ドイツは空爆に加わっていない。また、英国は、ソールズベリーでのロシア元スパイ、セルゲイ・スクリパリ氏等の殺人未遂事件で、ロシアと真っ向から対立している関係である。米国は、トランプ大統領がロシアン・ゲートを抱えている。そんな中、フランスは、ロシアと微妙な駆け引きをできる立ち位置にある。

 イランとの新たな核合意に関しても、米国同様、ロシアの合意も必要である。フランス外交が、どこまで大国をまとめられるか、試されている。

  
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