2024年11月22日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2018年7月13日

――日本人は、高学歴化し、大学全入時代に突入するかと言われています。

吉川:昭和の日本社会の高学歴化を支えていたのは、親も教師も子どもになるべく高い学歴を望み、子どもも当然そう考えているという大衆的に高学歴を望む「大衆教育社会」だったと言われています。戦後、多くの親たちが自分よりも高い学歴を子どもに望むようになり、1974年には高校進学率が90%を超えました。

 2009年に『学歴分断社会』を書いた当時は、「学歴分断」という言葉や概念自体がありませんでしたし、現実社会も大卒と非大卒の分断はまだ起きていなかったのです。データから、この先そういった事態が起こると予想したに過ぎません。しかし、2013~14年を境に、成人式から還暦までの現役世代は、大卒者と非大卒者(編注:ここでの大卒とは、短大、高専以上の学歴、それ以外については非大卒とする)の割合が、ほぼフィフティ・フィフティになりました。

――半々の割合で、大卒と非大卒になる学歴分断状態が継続すると何が問題になってくるのでしょうか?

吉川:大卒と非大卒では、就いている職種や産業、昇進のチャンス、賃金などが異なります。そのため、ものの考え方や行動様式も異なってきます。さらに、恋愛や結婚においても学歴による同質性は高く、日本人の7割が同学歴の相手と結婚します。また、日本人の8割が親と同じ学歴をたどり、子どももまた同じ学歴になるよう望んでいるということを加味すると、大卒家庭と非大卒家庭の分断は、やがて世代を超えて繰り返されるようになります。これはつまり、学歴が欧米の民族や階級のような働きをするようになっているということです。

 たとえば、この1週間でどんな人と話をしたかを思い返してみてください。大卒ならば大卒の人とばかり話し、非大卒ならば非大卒の人とばかり話しているのではないかと思います。両者のコミュニケーションが少なく、人生が交わらないので、互いに何を考え、どんな暮らしをしているのかがわからないし、知ろうともしていない。「住んでいる世界が違うから」という言葉を聞くことさえあります。これはまさしく深刻な分断状況だと言えないでしょうか。

――吉川先生が、特に問題を抱えているとみているのは、若年の非大卒層の人たちなのですね。

吉川:日本社会の現役世代は、ジェンダー、生年世代、学歴と3つの分断線でわけると、若年非大卒男性、若年非大卒女性、若年大卒男性、若年大卒女性、壮年非大卒男性、壮年非大卒女性、壮年大卒男性、壮年大卒女性の8つにわけられます。このうち特に不利な境遇にあるのが、若年の非大卒男性です。彼らのプロフィールは次のようなものです。

 かれらの多くが義務教育もしくは高卒の両親のもとで育ち、かれらの多くは製造や物流を始めとした、わたしたちの日常生活に欠かせない仕事に就いて日本を支えているのですが、5人に1人が非正規・無職、一度でも離職経験のある割合は63.2%、3カ月以上の職探し、失業経験者は34%、3度以上の離職経験がある割合は24%と他の男性たちに比べ高くなっています。労働時間だけは長いのですが、同じく非大卒の壮年男性と比べると個人年収は150万円近く低い。


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