2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2018年9月18日

 まさに「MaaS」(Mobility as a Service)の世界観だ。最近の配車サービスでは、一つのスマホアプリから、旧来の公共交通である鉄道やバスの運行状況やチケットの取得、さらには新たなモビリティサービスである自転車や電動キックボードのシェアリングを組み合わせ、移動の全体最適化を図っている。これまでにない、新しいプラットフォームが生まれようとしている。

 こうした状況下では、これまでの事業開拓とは異なる自由な発想が必要となる。たとえば今年7月、Uberはドライバーが乗客に容易に商品を売ることを可能とするベンチャー企業Cargoと提携した。Cargoは商品を提供する事業者と提携し、ドライバーにガムやスナック、携帯充電器などの商品を無償で提供する。乗客からの支払いはCargoとオンラインで行われ、ドライバーは売上の25%と品物1つにつき1ドルをオンラインで受け取ることができる。

 Cargoは17年の立ち上げ以来、約7000人のドライバーから100万ドルを超える売り上げを達成した。ドライバーは1年あたり平均1200ドルの収入を得ているという。

 こうしたビジネスはこれまでの「売り切り」とは違う「少額の収入を大量の顧客から継続的に集め」事業規模を拡大するビジネスであり、これまでの製造業とはビジネスの発想が異なる。また、現実的にモノとヒトを同時に運ぶ貨客混載は法規制を気にする日本の事業者には発想として難しい。

 判例法の立場をとる米国では、過去の判例がなく法で規定されていないものは基本やってみようということになり、問題があれば後で法制化される。これに対して、日本では法律に明記されていないことは事前に行政の判断を求めなければ動けない。

 これが顕著に現れたのが、電動キックボードのシェアリング市場の拡大だ。電動キックボードのシェアリングサービスを提供する企業は、これまでに総額9億3400万ドルのベンチャー資金を得ており、そのうち9億ドルは今年に入って投資されている。しかし、この分野の市場成長は今後の規制に左右される。実際いくつかの都市はまだスクーターの拡大に対処する法案を検討中で、今後多額の事業申請費用とサーチャージを検討している都市もある。

 こうしたビジネスが生まれる背景には、UberやLyftに代表される配車サービスのプラットフォーム化と、あらゆる移動手段を連携させるMaaSの成長がある。逆にそうしたプラットフォームが無ければ新しい市場が生まれない 。 

 今後、新興国や途上国の市場では、クルマは所有されるものではなく、配車サービス等を介してシェアリングされるものとして市場形成される可能性が高く、その先のMaaSも検討されている。そうした海外のニーズを把握し、海外市場向けの開発投資を行っていかなければ、国内市場の縮小とともに日本企業の国際競争力が低下してしまう。


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