2024年7月13日(土)

WEDGE REPORT

2018年10月20日

当事者意識に欠けるトランプ大統領

 英仏独3国外相による10月14日の共同声明は、「事件を深刻に受け止めている。何が起きたのか真相究明を行い、関与した者の責任を問わなければならない」と強い懸念とサウジへの疑惑を表明。サウジとトルコの共同調を求め、「完全かつ詳細な回答を期待する」とサウジ政府に迫っていた。

 欧州各国の反応とは裏腹に、いたって対応が鈍いのがトランプ米大統領だ。カショギ氏は米国の永住権を持ち、バージニア州に居を構えており、米国は〝当事者〟のはずだ。大統領はサウジがカショギ氏死亡を認めた20日の発表を受けて、遊説先のアリゾナ州で「重要な一歩だ」と述べ、発表は信用できるとの見解を明らかにした。

 大統領は10月14日、「サウジ政府の関与が明らかになった場合は厳しく対処する」と言明したものの、翌日、サウジのサルマン国王との電話協議の後は一転して、「国王は何も知らなかったといっていた。皇太子も知らなかったようだ」と子供だましのようにサウジをかばい、「ごろつきの殺人者の仕業ではないか」などと珍妙な見解を披露した。トランプ発言通りだとすると、総領事館内を「ごろつき」が闊歩しているというへんな話になるが、サウジ王室関与の印象を薄める意図であることは明白だった。

 身内の共和党からもサウジ批判の火の手があがっているにもかかわらず、大統領が臆面もなく露骨にサウジをかばい立てするのは、サウジが中東における強固な同盟国であり、イランに対抗するうえで、その存在が欠かせないことがひとつ。サウジが米国にとって大量の原油供給国であること、昨年5月、1100億㌦の巨額の武器売却契約が成立したことなどの理由もある。トランプ大統領は、圧力をかけるとサウジはむしろイランと手を組む可能性があること、武器売却が白紙に戻れば、ロシアや中国が武器を売りつけることも懸念している。

 そうした危惧はもっともではあるが、事は、報道、表現の自由、人権に関わる問題だ。これらは、民主主義の根幹であり、米国の朝野が建国以来、重きを置いてきた価値観のはずだ。

 米国では、さきにトランプ大統領が指名したカバナー最高裁判事の議会承認が、氏のセクハラ疑惑で難航。かろうじて承認されたものの共和党内部も含めて大統領への批判、不満が強まっている。それだけに、今回、対応の仕方を誤れば反発はいっそう強まり、11月6日に投票を控えている中間選挙に影響を与えかねない。


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