全国有数のブランド牛の産地で半世紀前から牛肉駅弁を出していた
駅弁屋が2002年に売り出した全国初のメロディ付き駅弁。
黒光りするインパクト大の牛顔型容器に、童謡のメロディ――
牛肉たっぷりのとろけるすき焼き丼に大人も子供も満足の人気作。
牛肉は日本で最も人気がある食肉であろう。牛肉の駅弁も、今では各地で高い人気を集めている。
今から約半世紀前の1959(昭和34)年7月15日、国鉄の紀勢本線(和歌山~亀山)の全通を記念し、三重県の松阪駅で牛肉をメインとした幕の内駅弁「牛肉弁当」が登場した。これは全国初の牛肉駅弁とうたわれている。兵庫県の和田山駅や山形県の米沢駅では、その前から牛肉の駅弁を販売していたという主張もあるが、少なくとも牛肉の駅弁が名物と認識されたのは、当時の文献などを見ると松阪が最初なのではと思う。
今では札幌駅から鹿児島中央駅まで、約150種類の牛肉駅弁を選べる時代になった。松阪の牛肉駅弁は「元祖特撰牛肉弁当」とその名を変えてアピールを続けるが、さすがにこれだけ数が増えては、その存在が埋没してしまう。2002(平成14)年9月28日、そんな松阪駅で、ユニークな名前の駅弁が新商品として登場した。これが「モー太郎弁当」である。
超リアル――牛の頭部型容器
牛顔型の真っ黒なプラスティック製容器は、弁当箱として機能できる平面を確保できる範囲で、黒毛和牛の頭部を見事に再現している。駅弁売店に陳列されている時は、商品名などを印刷したボール紙に包まれているが、その時点で耳や頬がはみ出している。容器が姿を現したとたんに、泣く子もいるという。
顔のふたを開けると、童謡「ふるさと」のメロディーが流れる。ふたの裏に電子部品が貼り付けられており、これを暗がりに置くか泣き疲れるまで(60秒で止まる仕様)、単音の電子音が響き続ける。音が鳴る駅弁容器は20世紀にも存在したが、メロディ付き駅弁としては全国初だそうだ。しかし、携帯用の電話機やゲーム機が氾濫し、電車内での使用マナーを鉄道会社が訴える時代であるから、車内でふたを開ける時には周囲への気配りをお忘れなく。
いよいよ肝心の駅弁の中身である。