リーダー育てる競技として
田村:早稲田大学に大西鉄之助先生(故人)という立派な指導者がいるのですが、学生たちに「君たちはなぜラグビーをやっているのか」と問い掛けます。その答えは社会のリーダーになるためなのです。誰かがルールを逸脱したり、フェアじゃない行為をしようとしていたら止めなければいけないし、自分がそうしようとしたら、自身で踏み止まらなくてはならないのです。そういう人間になるためのラグビーなのだと教えられます。
村上:試合中、偶発的に頭同士がぶつかったりしますが、そこでかっとならないために、自分を抑えられる人間にならなければいけません。だからこそ日々感情をコントロールする訓練をしているのです。自制心を養うスポーツとも言えます。ラグビーをしている人は普段穏やかな人が多いと言われるのもこうしたことが理由だと考えられます。
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ラグビーワールドカップ2019~TOKYO2020を迎えるにあたって
筆者は、スポーツマンシップとは、ルールを守り、審判や対戦相手、チームメイトやスタッフに対するリスペクトは言うまでもなく、競技に関連する全てのものに感謝の念を持つことだと考えています。こうした心の姿勢なくして、良き仲間として良きライバルとして互いに高め合う関係など構築できるはずがありません。
フェアプレーの精神とは、ルールを守ることはもちろん、ルールに書かれていない心のありかたを指す言葉だと考えられます。
競技外にあっては人として、競技内にあってはプレーヤーとして、いかに礼儀正しく謙虚であるか、寛容であるか、真摯であるか、高潔であるかなど、精神的な成熟度を伴う行動でしょう。
その上で、主体的に物事を考え、主体的に行動し、競技中は全力を出し切ることです。
このフェアプレーの精神は直接勝利に関わるものではありませんが、人格を高め、品格を備えることは、人としての美しさに繋がり、自身の生き方の追求と言えるものです。これは選手として肉体が衰え、競技引退後もなお、生あるかぎり磨き続けられるものです。
スポーツマンシップの根底にあるものは多様性を尊重するという姿勢です。
2019年にラグビーワールドカップが開催され、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。スポーツ界に限らず広く社会が和をもって発展することを願ってやみません。そして世界中の人々に和の心を受け止めていただきたいと願っています。
この世界の大イベントがスポーツの原点でもある、異なる民族や文化、生活習慣の違いなどの偏見を減らし、尊重し合うことの大切さを実感できる機会になるよう一人の日本人として願っています。
お忙しい中ラグビージャーナリストの村上晃一さんとラグビーマガジン編集長の田村一博さんに長時間に渡りお時間をいただき誠にありがとうございました。深く感謝しております。
『“熱視線”ラグビーW杯2019の楽しみ方』は2019年のラグビーワールドカップ日本大会まで続きます。
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