2024年12月22日(日)

青山学院大学シンギュラリティ研究所 講演会

2018年11月23日

 青山学院大学シンギュラリティ研究所設立記念講演会が、前期6回にわたりおこなわれ、好評を博したため後期6回が追加された。これはドローンとマッピングをテーマにした後期1回目の講演の要約である。最初に登壇したのはドローンの専門家であり、crescendo LDesign代表の渡邊秋男氏。彼がドローンの歴史と未来を語った。

渡邊秋男氏(写真・小平尚典)

ドローンの歴史

 私はドローンパイロットであり、ドローングラファーであり、富士山空撮家とも呼ばれています。富士山の近くにある廃校になった小学校でドローンスクールも開講しています。ドローングラファーとはドローンパイロット+フォトグラファーの造語でして、ドローンの操縦に加えて、カメラの操作、映像の演出、素材からの編集、BGMを付けてYouTubeで公開まで1人でおこなう人をドローングラファーと呼びます。これ以外にもAEDを搭載したドローンで人命救助に使われたり、Amazonなどが推進している荷物の輸送になどの物流革命、農薬散布、作物の育成状況の確認、航空測量にも使われています。

 ドローンの名前の由来はオスバチから来ています。ではなぜオスバチなのか。話は1934年にさかのぼります。イギリス海軍が開発した無人標的機をクイーンビーと名付けました。つまり女王バチですね。これに対抗してアメリカ海軍が1941年に作った無人標的機にターゲットドローンという名前を付けました。これがドローンのルーツです。つまり海外では無人機のことをドローンと呼んでいます。私は羽根が沢山あるのでマルチコプターと呼んでいます。アメリカではUAV(Unmanned Aerial Vehicle)、それをひっくるめてUAS(Unmanned Aircraft System)と呼ばれます。

 日本では1980年代から農薬散布用にドローンは使われてきました。なぜ、日本ではマルチコプターをドローンと呼ぶようになったのでしょうか。きっかけになったのは2010年に発表されたフランスParrot社の「AR.Drone」の広告動画からです。スマホのアプリを使って自由自在に飛び回る飛行体を見て、我々はこれはドローンという名前なのだと認識しました。2013年にはドローン専用回シュアのDJIがホバリング機能を搭載して、ドローンは安定して空中で静止できるようになりました。さらにジンバル機能が追加され、搭載された動画カメラでブレずに撮影できるようになりました。

ドローンの進化と問題点

 GPSとドローンとの関係は切っても切れないものになっています。ドローンの自律航法にはGPSが欠かせません。また操縦中に機体をロストした場合、自動的に戻ってくる機能がありますが、これにもGPSが使われています。空の面積が極端に狭い場所でドローンを飛ばすと認識できる衛星の数が減ります。通常は16個ぐらいだとすると、6個に減ってしまいます。そんな時は暴走が起こりやすくなります。例えば室内でスマホのGoogleMapを開くと現在地を示す円の直径が普段より大きくなっていることがあります。これはGPSの精度が落ちているため、この円の中のどこかにいるとしか言えないことを意味します。ドローンもこれと同じ状態になる訳です。現在地が不安定なので、ドローンは自分が風で流されていると判断して位置を修正しようとして暴走がおこります。

 また2013年に姫路城にドローンが墜落するという事故がありました。あれはRTH(Return to home)という機能が原因とされています。ドローンが操縦者を見失った時に働く機能で、ドローンは高い位置まで高度を上げて戻ってこようとします。デフォルトの設定は30mまで高度を上げて帰ってきます。姫路城は高さ45.6mなので高度不足でドローンはお城に激突してしまいました。ドローン操縦者は今、電波が途切れたらどうすればいいかを常にイメージしながら操縦することが大切です。


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