2023年2月7日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年11月29日

»著者プロフィール

・域内の協力に関して、障害もある。1つは、米国の同盟国でもある韓国と日本との歴史問題である。「慰安婦」問題では、2015年の日韓の「不可逆的」合意を現在の文大統領が拒否した。「徴用工」問題でも、1965年の「完全かつ最終的」合意があるにかかわらず、最近、最高裁が日本の企業へ支払いを命じる判決をした。韓国は、歴史を軽視するのではなく、インド、台湾、フィリピンやインドネシアがかつての宗主国とそうしたように、日本と相互利益となる新たな関係を築くべきである。

・インド太平洋地域の民主主義諸国の協和においてもう1つの潜在的障害は、鍵となる諸国の内政の不安定化である。例えば、戦略的な位置にあるスリランカでは、大統領が憲法にない権限を行使して、首相を解任した。

・いずれにしても、日印関係の緊密化は、中国中心のアジアの出現を制止するのに役立つだろう。日本とインドの関係が、域内の民主主義諸国の連携を強化する方向に働けば、自由で開かれたインド太平洋の実現も不可能ではない。

出典:Brahma Chellaney ‘A Concert of Indo-Pacific Democracies’ Project Syndicate, November 12, 2018

 チェラニー氏は、2009年からProject Syndicateに寄稿している。概して、親日的、民主的な論調で、今回の記事は、東京から寄稿している。

 戦略研究家としてのチェラニー氏は、上記記事の中で、幾つか重要なことを指摘している。1つ目は、安倍総理のイニシアティヴである。安倍政権は、上記の日印関係以外にも、日米、日米豪、日米英仏、日英、日仏等とも積極的に共同軍事演習、軍事訓練を行っている。また、今回APEC首脳会談が開催されたパプア・ニューギニアを含むインド太平洋諸国に、能力構築支援を行っている。

 2つ目は、主要な海洋国家、日米印豪の連携を提唱している点である。これは、かつて安倍総理が「ダイヤモンド構想」として、これら4か国の連携を挙げたのと一致する。インド太平洋地域の主要な拠点で、これらの海洋国家が協力できれば、自由で開かれた地域の実現に向けて大きな力になるだろう。

 3つ目は、域内の主要な民主主義国として、日印豪の他、インドネシアを挙げていたことである。インドネシアは、ASEAN諸国の中でも最大の人口を有し、面積も、シンガポールから豪州までにわたる諸島を領土とする。世界最大のイスラム教国家でもあり、共に行動できれば、地域の安定に資するだろう。

 4つ目は、問題点として韓国とスリランカを挙げたことである。現政権ないし大統領が中国寄りなのを懸念しているのが分かる。

 チェラニー氏が特に指摘はしなかったが、地域で重要なのがASEAN諸国である。シンガポール、フィリピン、タイ、ベトナムしかりである。このことは、安倍総理も、モディ首相も、トランプ大統領等も理解している。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る