世界に知られる日本の絵画といえば、葛飾北斎さんの「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」。
この絵は2020年3月をめどに発行される日本のパスポートの査証欄のデザインに使われます。今も昔も多くの逸話が秘められた作品です。
「百年人生」も見ていた北斎さん
世界に名高い葛飾北斎さんの「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」は天保2年(1831)頃に刊行(①)。北斎さんが71歳頃に描いた46枚シリーズの中の1枚です。そのうちこの絵を含む24枚は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに先立って、2020年3月をめどに日本のパスポートの査証欄に用いられるそうです。日本の伝統文化をアピールし、偽造防止にも役立てるという粋なはからい、更新が楽しみです。
そういえば6年前、パリのユネスコ本部で、ユネスコ前事務局長イリナ・ボコバさんが言ったのは、「この『GREAT WAVE』(英語での通称)は世界中の大きな美術館が所蔵していて、私も大好きです。世界で2番目に有名な絵ですね」
「では、1番有名な絵は何ですか」と聞くと、
「そりゃ~、レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナリザ』よ」と。さすが北斎さん、ライバルも違います。
さて、「神奈川沖」は「神奈川県」の沖合ではなく、「神奈川宿」の沖です。東海道の日本橋を旅立って、品川宿、川崎宿、そして次がこの神奈川宿。現在の横浜駅や横浜みなとみらい21辺りの沖。東京湾に立った大きな波と、その波越しに見た雪をかぶった富士山(②)を、現在の木更津沖から描いた作品です。
和船が描かれています。「押送(おしおく)り船(ぶね)」という8人漕ぎの超高速運搬船(③④)。南風が吹いて高波が立つと、市場に品物が運ばれて来ません。その品薄のお江戸の市場をねらって、房総半島などの生鮮食料品を積み、船の舳先を大きな波にぶつけて、頑張っていい仕事をしています。しかも3艘も!