2024年4月18日(木)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年2月21日

国家非常事態宣言の本音

 トランプ大統領は、米国防総省と財務省の予算を転用し、メキシコとの「国境の壁」建設費を確保しようと同日、国家非常事態宣言を発動しました。その際、トランプ大統領は本音を漏らしています。

 「必ずしも必要がなかったが、早くやりたかった」

 トランプ大統領のこの発言を聞いていたホワイトハウスのスタッフは、きっと両手で顔を覆いたくなったでしょう。 

 うえの発言は、「国家非常事態宣言を出す必要は必ずしもなかったが、米議会が十分な壁建設費を新予算案に盛り込まないので、早くメキシコとの国境の壁を建設しようと思い、宣言をした」という意味です。

 つまり、「国境は危機的状況ではなかったが、米議会と折り合いがつかなかったので、国家非常事態宣言を発動した」と解釈できます。これが本音でしょう。

 トランプ大統領は、国家非常事態宣言の理由に「国境の危機」を挙げ、その必要性と緊急性に訴えてきました。ところがうえの発言によって、自ら非常事態宣言の正当性を否定してしまったわけです。

 米公共放送、公共ラジオ及びマリスト大学(東部ニューヨーク州)の共同世論調査(2019年2月15-17日実施)によれば、「国境の壁」を建設するための国家非常事態宣言に対して、全体の36%が賛成、61%が反対です。とはいえ共和党支持者をみますと、85%が賛成しており、トランプ大統領が本音で語っても彼らには殆ど影響がなかったようです。

  
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