2024年12月22日(日)

青山学院大学シンギュラリティ研究所 講演会

2019年3月16日

 青山学院大学シンギュラリティ研究所設立記念講演会の後期5回目最後に登壇するのは日本IBM 佐々木シモン氏である。サンフランシスコ、ニューヨーク、ロンドン、東京を始めとする10カ国以上に拠点を置くワー

ルドクラスのチームIBM Developer Advocateに所属。2017年にはスタートアップ事業育成支援および大手企業とスタートアップ企業とのコラボによるオープン・イノベーション活動にて技術メンターを担当。専門分野はAI技術(IBM Watson Developer Cloud)とブロックチェーンにてコンサルティングやコンテンツ作成をおこなっている。

佐々木シモン氏(写真・小平尚典)

講演の前にミーティング?

 みなさん、こんにちはIBMの佐々木シモンです。今後、AIはファッションや芸術など、もっと右脳的なところで使われるべきだと考えています。これから世の中はAIだけでなくテクノロジーの進化によって大きく変化していくと思われます。本日のテーマは「ファンションとAIとブロックチェーンと東京」と決めてきました。東京が入っているのは、ここが東京、しかもファッションの中心地の表参道だからです。

 実際にAIを活用しようとして困ることは、データがないことです。AIのことは教科書で学べたとしても、運用するにはデータが必要になります。そのデータがどこにあるかと言えば、Googleで探しても見つかりません。皆さんの会社の中にあったり、その案件の中から見いだす必要があります。これを公開する訳にはいかないので、私は「水曜ワトソンカフェ」という月例AI勉強会コミュニティーで、実際のデータの扱いについて非公開で勉強会をしています。この中で最初にやっているのが、メンバーがお互いに自己紹介をしあうことです。そこで、今日も皆さんに隣同士で1分間、自己紹介をしていただきたいと思います。またAI、ブロックチェーン、VR、ファストファッション、ダイバーシティ、東京は世界ランキングで何位なのか? などについて話し合ってください。

ファストファッションの問題点

 さて、IBMは2017年の東京ガールズコレクションにドレスを出品しました。観客の方にツイートしてもらうとドレスの色が変わるという仕掛けになっています。WatsonのAIが観客の感情を読み取って、それに応じた色合いを選択しています。それから、先度ルグランの講演にも出てきましたがXZ(クローゼット)にもWatsonが使われています。これは手持ちの服を登録すると、自動的にコーデを提案してくれるアプリです。洋服の画像を取り込む時にWatsonが服の種類と色を自動的にタグ付けしています。

 私がファッション業界の仕事していて、気付いたのはファストファッションの台頭です。なぜ安いかと言えば、安い賃金の所で大量に作っているからですね、さらに服の素材を自然由来ではなく、石油由来のナイロンとかポリエステル、アクリルなどで作っているからです。ウールやコットンを使わないことでもコストが下げられます。その一方で、劣悪な環境で働かされている人々がいます。2013年にはバングラデシュで縫製工場が入った商業ビルが崩落して大惨事になりました。事故前日に警察から退去命令が出ていたのですが、ビルオーナーがこれを無視したため死者1134人、負傷者2500人以上の犠牲が出ました。これをきっかけにアパレル産業の在り方が問われています。

 大量生産することによって服が余るという現象も起きています。2030年に20億トン近くも余剰がでると言われています。問題は需要に対して40%も供給の予測が間違っていることです。あまりにも無駄が多すぎると思いませんか。また、どの国で作られ、どんな素材で作られた服を買うかという問題になりますが、それだと意識の高い人しか実践できないと思います。これをAIとブロックチェーンで解決できないかと考えています。

IBMから見たダイバーシティ

 私が管理職になった時、IBMには170カ国ぐらいの人々が働いており、年下の方が上司だったり、女性の社員数もすごく多かったんです。そんな中で差別なく接するためにはパーソナリティが重要でした。ダイバーシティを考えるにあたって、パーソナリティは3層に分かれていると教えられました。コアの部分は自分では変更できない、性別、国籍、障害のありなしなど、その外側に性的嗜好、宗教など、さらにその外側に居住地域とか収入などがあります。

 IBMは1911年創立です。その当時から女性および黒人の採用、1943年に女性の副社長が登場したり、1946年には黒人の営業担当者、最近では同性愛者、同性婚のパートナーも登録出来る制度を作っています。現在は女性CEO統括の元で、これらの方策を実施しています。社員数は36万人で那覇市の人口とほぼ同じ規模です。 

IBM Watsonが人間を打ち破る!

 Watsonがアメリカのクイズ番組で人間に勝ったのは2011年のことでした。現在はどう進化しているかと言えば、質問に答えるだけでなくディベートができるようになりました。あるテーマに対してどうすべきかという議論にも対応できます。

 また、話している言葉を分析して、その人の個性を理解できるようになりました。女性とか男性とか年齢では、パーソナリティは分かりません。そこで発言内容からAIが、個性や欲求、価値観などを判断、グラフ化してパーソナリティが分かるようになります。このリンクから試してみましょう。Personality Insights( https://personality-insights-demo.ng.bluemix.net/?source=myself

3次元空間を理解するAI

 2018年になってAIは壁を理解できるようになりました。つまり、空間を正しく認識して、そこにリアリティのある物体を配置できるのです。これを実際の風景と組み合わせてVRで表示できます。

 VR用のゴーグルと入力機器を使ってプレイヤーは、実際の空間に入り込んでゲームをプレイできるようになりました。2019年4月に発売予定のギアを使えば、PCレス、そしてワイヤレスでVRゲームができるようになります。


新着記事

»もっと見る