青山学院大学シンギュラリティ研究所 講演会

2019年2月6日

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青山学院女子短期大学のみなさん(写真、小平尚典)

 青山学院大学シンギュラリティ研究所設立記念講演会の後期5回目に登壇するのはルグラン・泉浩人氏である。慶應義塾大学経済学部卒、米国ジョージタウン大学MBA修了。三井銀行、フォード自動車等を経て、オーバーチュア(現ヤフー)の日本進出に参画。2006年にルグランを設立。行動履歴データの統合的な活用と最新のUX理論にもとづくウェブやアプリ・サービスのシステム・デザイン設計プロジェクトも多数手がける。ビッグデータを活用したAKB48選抜総選挙予測が注目を浴び、2014年には日本広告学会クリエイティブフォーラムで最優秀賞を受賞している。ファッションにAIはどう生かされているのだろう。

泉氏(写真・小平尚典)

AIを使ってビッグデータを活用する

 みなさん、はじめまして。私は泉と申します。本日はAIがマーケティングにどう使われるのかをビジネス的な側面からお話ししたいと思います。私がルグランを作ったのは2006年、もうすぐ創立13年になります。クライアントは割とアパレル企業が多いです。データを活用するのが特徴の会社です。私ともう1人の共同経営者も、もともと銀行員でして、数字を扱うことになれておりマーケティングを得意としています。

 これは半分お遊びですが、毎年AKB総選挙の結果を口コミデータを使って予測しています。世の中のトレンドをどう理解するかのサンプルとしてやっています。今年はIBMのAIソリューションを使っています。ブログやTwitterのツイートから各メンバーの順位を予測していますが、せっかくIBMのAIソリューションをつかっているので、言語解析機能を使って書き込みデータから感情を5分類するという試みもしています。

ファッション業界は天候にも左右される

 今年は温かい日が続いていますが、ファッション業界というのは意外と天候に左右される面を持っています。また、売れないから前倒しでセールをおこなうも売れない。ライフスタイルの変化でスーツが売れなくなる。などさまざまな要因で服が売れなくなったりしています。一般的には冬のセール、夏のセールで利益を確保していくのですが、お客さんに最適なタイミングで季節に合ったファッションを提案することが大事です。セールで売るというのは売り手側の都合で、これ以上、在庫していたら売れなくなる。価格を下げて誰にでもいいからドーンと売りたいのですが、なかなか昔のように売れなくなった。

 それではどうすればいいのか。我々が提案するのはマイクロマーケティングですね。皆さんに売るのではなく、この服はあなたとあなたは欲しいけれど、あなたはまだ不要ですねということを理解して売っていく手法です。これを助けてくれるのがAIです。別にAIを入れたからと言って、その日から何かが変わったり、売上が劇的にアップする訳ではありません。人手の代わりにAIが役立つという感じです。

AIを使って顧客の行動を分析する

 これが実際にあるアパレル系のECサイトの購入分析をやった結果です。ECサイトで何が重要かと言えば、同じお客さんに何度も購入してもらうことです。新規のお客さんに購入してもらうためにはかなりコストが掛かります。広告宣伝費を使って新規のお客さんに来てもらって購入したが、1回限りでもう来ませんでは、採算がとれません。2回目、3回目、4回目と買ってもらうことが重要です。2回しか買わない人はどんな人かと言えばセール目当てですね。半年に1度、1年に1度しか来てもらえない。

 こういったお客さんの購入履歴、気持ち、ライフスタイル、職業、性別、家族構成などの要素を分析して、さらにどんなブランドをいつ購入しているのかなどを掛け合わせていくとものすごいパターンのセグメントが見えてきます。これが分かると何をいつオススメすればいいかが分かってきます。しかし、セグメント分析を人力でやるのは大変なのでAIの出番があります。

 例えばですが、今までセールの時しか買ってくれなかったお客さんにタイミングを見計らって、その人に合った服を提案すれば、セール以外の時期にも売れるかもしれません。こうして購入間隔を2ヵ月に1回、3ヵ月に1回と増やしていく。もっと細かいコミュニケーションをとることで購入間隔を短くしていくというのがマイクロマーケティングになります。それを実現するためにAIが必要になっています。

 

マイクロマーケティング先進国は中国だった

 この戦略が盛んにおこなわれているのが中国です。中国は個人情報の取得が楽という側面があります。こうして得た情報を元にものすごくいろいろなアプローチをおこなっているのが中国なんですね。これはニュースにもなりましたが6月にアルファロメオが中国に進出することを決めました。しかし、中国は広いのでいきなり全土に展開することはできません。何かアルファロメオを中国でパッと売る方法はないかと考えた結果、アリババに協力してもらい、QR決済のアリペイの膨大な決済データを調べて、過去の購入履歴から、外車、イタリア車を買いそうな人たちをセレクトしてアプローチすれば売れるのではないかという戦略を立てました。試しに350台を中国に持って来て販売したところ30秒で完売しました。1分かからずに350台が全て売れてしまったのです。

 これはまた別の中国、平安保険という会社の場合ですが、英語では平安Good doctorと呼ばれる医療アプリを作りました。これを使って専門家の先生にいろいろな健康相談ができるというものです。こうして個人の健康データを蓄積していくと、この人はそろそろこの保険に入った方がいいという絶妙なタイミングが分かります。この手法でものすごく業績を伸ばしています。現在は創立3年で2億人のユーザーを抱えています。マイクロマーケティング的な手法は中国だけでなく全世界的に大きなトレンドになっています。

 

これからはアイサスが変わる

 マーケティングの手法にアイサス(AISAS)と呼ばれものがあります。これは電通が考えたのですが、Attention、Interest、Search、Action、Shareの順番で世の中に製品が売れていくという考え方です。いままで、注意をひいて、興味を持ってもらうAIの段階には莫大なコストがかかるマスマーケティングが必要というのが常識でした。しかし、ある程度のデータがあって、マイクロマーケティングができれば、それが不要になるかもしれません。 Attention、Interest のAIの部分が人工知能のAIに置き換わるかもしれないのです。

 

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