2024年12月26日(木)

青山学院大学シンギュラリティ研究所 講演会

2018年11月24日

 青山学院大学シンギュラリティ研究所設立記念講演会の後期1回目の後半に登壇するのは青山学院大学地球社会共生学部教授で、クライシスマッパーズ・ジャパン代表の古橋大地氏である。古橋氏が語るのはドローンの空撮データから作る著作権フリーの地図データベースが実現した災害支援とその未来である。

古橋大地教授(写真・小平尚典)

地図は自分たちで作る時代

 私は青山学院大学地球社会共生学部教授の古橋大地です。相模原に3年半前にできた新しい学部で、今年でようやく1期生が4年生になって卒業生を迎えられることになりました。その中で私は地図作りを教えています。我々の学部の学生は主に途上国に行くことが多いのです。当然、インフラがあまり整備されていません。そんな時には地図を自分たちで作らなければならない事態に直面します。

 そんな時に従来の方法ではなく、ドローンなどを活用した新しい地図の作り方を研究しています。2019年からはドローンジャーナリズムの授業も受けられる予定です。ドローンも飛ばしています。実際にドローンを飛ばすことで何かが出来るかを考えています。現在は100gの軽量ドローンに4Kカメラを搭載できるところまで来ています。もちろんGPSには対応しないのでドローンパイロットの腕前が要求されますが、これで室内の撮影や人のすぐ脇を飛んだりできます。

 先日、トヨタ自動車がソフトバンクとの提携を発表しました。同社がCESで発表したモビリティサービス開発のためです。トヨタは2020年には自動運転のクルマを走らせてサービスを開始したい。ソフトバンクはUberの筆頭株主です。そういったことも含めて提携したのだと思いますが、ここで驚いたのはソフトバンクが採用した地図が、GoogleMapでも、Yahoo!地図でもなく、OSM(OpenStreetMap)をベースにした Mapbox だったのです。

 これは我々、青山学院の学生も地図作りに参加している自由に編集して利用できる地図情報のデータベースです。ロンドン大学のスティーブ・コースト氏によって始められた活動です。この活動は2004年に始まり、現在は世界中で約500万人が地図作りに参加しています。毎日、5000人ぐらいの人が地図のデータベースをボランティアで更新しています。

 日本でもこの活動は行われていて、地図でマッピングすると都市部に集中していることが分かります。なかでも特異的に人口が多い所があります。例えば千葉県の柏市です。ここには東大の柏キャンパスがあります。青学に来る前、実は私がここで講義をしていました。そこで学生たちが課題をクリアーするために地図情報を書き込んでいたんです。つまり大学などの教育機関が中心になってOSMを活用した授業がおこなわれています。こうして世界中の地図を学生と一緒に作っています、1日150人ぐらいですかね。

地図データの更新は2018年には1日約5000人に達しようとしている 写真を拡大
東京で地図データを書き込んでいる人たちをアイコンで表示する 写真を拡大

 オープンには2種類の意味があって、利用は自由ですがライセンスはガチガチに制限、それと二次利用、商用利用も自由にしてくださいというオープン、OSMは後者なので、この10年で多くの企業に利用されています。例えばJALとか日立とか。商用利用であったとしても利用料は無料です。昨年からポケモンGOの地図もOSMが使われています。ですから、ポケモンGOを起動して青学の相模原キャンパスに移動するとものすごく詳細な地図が出て来ます。これは学生たちがデータを一生懸命入力したからです。

 カシオのプロトレックシリーズにもOSMが使われています。インターネットに接続できる環境ではGoogleMapを表示しますが、それが出来ない時は、時計に保存されたOSMのデータを表示します。それからFacebookにもOSMを採用しています。例えば災害支援ハブという機能等に使われています。この時に使う災害用のクライシスマップがOSMという仕組みを使って迅速に作られるようになってきました。

Facebook、Apple、UBERなど世界的規模の企業がOSMを利用している

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