西山隆行が読み解くアメリカ社会

2019年2月28日

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西山隆行 (にしやま・たかゆき)

成蹊大学法学部教授

東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。甲南大学法学部教授を経て現職。専門は比較政治・アメリカ政治。著書に『アメリカ型福祉国家と都市政治』(東京大学出版会)、『移民大国アメリカ』(筑摩書房)、『アメリカ政治』(三修社)、『アメリカ政治入門』(東京大学出版会)、5月に『アメリカ政治講義』(筑摩書房)が刊行予定。

民主党に大きな分断をもたらす「社会主義」のイメージ

 では、アメリカ国民は社会主義という言葉をどのようにとらえているのだろうか。2018年のギャラップ社の調査によると、民主党支持者の57%が社会主義に好意的な立場をとっているのに対し、共和党支持者で社会主義に好意的な立場をとるのは16%に過ぎない。共和党支持者は、現在アメリカが社会主義的な方向に進んでいることに対して懸念を示している。同様の調査結果は、フォックス・ニュースの調査等からでも明らかである。

 選挙との関連でいえば、2015年6月にギャラップ社が行った調査によれば、社会主義者に投票するかと問われた場合、50%程度の回答者が投票したくないと回答しており、その割合は、イスラム教徒、無神論者、イスラム教徒、同性愛者に投票したくないと回答した人の割合より高い。また、2018年8月の、YouGovの調査では、民主党支持者の41%、無党派層の29%が、社会主義者を自称する人物が大統領候補になることに対し好意的な立場を示す一方で、ためらいを感じる、あるいは非常に不愉快であると回答した人の割合は、民主党支持者の59%、無党派層の71%に達しており、民主党支持者の間にも、社会主義者を自称する人に投票したくないという考えが強く残っていることを示している。このような状況を考えると、トランプ大統領が民主党候補のことを社会主義者と批判しているのは、効果的な戦略だと言えるだろう。

 実際、この状況は、民主党の政治家の間に大きな分断をもたらしている。アメリカは領土が広大なこともあり、地域によって社会的な構成が大きく異なっている。一般的には、東海岸や西海岸の大都市部では圧倒的にリベラル派が強いのに対し、農村地帯や郊外では保守的な傾向が強い。そして、社会主義者を自称する政治家は、多くの場合、圧倒的にリベラルな有権者が多く、左派的な立場をとっても民主党が負けるとは考えられないような地域から選出されていることが多い。

 他方、選挙で二大政党のいずれが勝利するかがわからない激戦の選挙区から出馬している人々は、穏健な有権者の支持を勝ち取らなければ勝利できないこともあり、民主党に社会主義のイメージがつくのを避けようとする。そして、民主党が以後の議会選挙で多数を勝ち取るためには、このような激戦区で勝利を積み重ねることが極めて重要なため、主流派やナンシー・ペロシ下院議長ら指導部は、党の政治家が左派的傾向を示すのに歯止めをかけようと努めている。それが、オカシオ・コルテスら左派的傾向の強い政治家の間で党主流派に対する不信感を生み出す原因となっている。

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