2024年4月19日(金)

公立中学が挑む教育改革

2019年3月5日

失敗の連続が価値になっている

澤:だけど少しずつ、世の中の空気も変わってきましたよね。「世の中にはいろいろな考え方があるんだ」ということが明るみになっている時代だと思います。「自分の価値観はなんだっけ?」という問いに向き合って、他人と比べることなく自分の人生を選べる時代。

工藤:自分の生きてきた道を否定するのは大変なことですが、一度きれいに拭い去るという経験をすれば、すっきりするのかもしれませんね。

澤:はい。過去はどうせ変わらないものだから、とらわれなくていいんです。過去の自分には関わらなくていい。

工藤:とは言え私は、駆け出しの教員だった20代の頃の自分を振り返って、つい嫌悪感を覚えてしまうことがあるんですよ。「俺に染まるなよ」と言いながら生徒を自分色に染めようとしていたこともあったし、「工藤先生のようになりたい、でもなれなくて辛い」と言っていた生徒もいました。そうしてしまった自分には嫌悪感があります。

澤:僕も失敗の蓄積でここまで来ていますから……。子どもの頃からあまりほめられたことがなく、20代までは自分の嫌な部分にばかり目が向いていました。でも30代になってからは「あなたのテクノロジーに関する話は分かりやすい」と言われるようになった。文系でエンジニアになり、苦労したからこそ分かりやすく伝えられるようになったんです。失敗の連続が価値になっているということに、周囲の声で気づかされました。

工藤:共感します。若いうちの失敗がどれだけ現在の糧になっているか。振り返ってみれば本当に貴重な経験をしているんですよね。

澤:はい。僕の場合は、それまでの自分に成功体験がなかったこともラッキーだったと思っています。脆弱な自信しかないから、油断することなく、常に種火を灯し続けようと努力してきました。

≪後編に続く≫ 教育も組織も変える「魔法の問いかけ」とは?

(撮影:稲田礼子)

多田慎介(ライター)
1983年、石川県金沢市生まれ。大学中退後に求人広告代理店へアルバイト入社し、転職サイトなどを扱う法人営業職や営業マネジャー職を経験。編集プロダクション勤務を経て、2015年よりフリーランスとして活動。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。

  
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