野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2019年4月19日

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野嶋 剛 (のじま・つよし)

ジャーナリスト

1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com

2年前に、私が出馬を予想していたワケ

 私の電話やメールには、昨日から、シンクタンクやメディア、日本政府の関係者から連絡が相次いで入っている。過去、日本各地で台湾政治について講演したり、記事を書いたりするにあたり、テリー・ゴウが国民党の切り札になる可能性を指摘してきたこともあるだろう。その私でも、今回の出馬表明は意外であった。というのも、九合一選挙のあと、韓国瑜という新しい国民党の政治スターの登場によって、テリー・ゴウへの注目度は低下していたからだ。どんな理由でテリー・ゴウが最終的に立候補を決めたのか、その内心や政治的な背景を読み解くことは現時点ではなかなか容易ではない。

 ただ、私は、テリー・ゴウが出馬を表明した台湾のテレビを日本で見ながら、NewsPicksというメディアに「郭台銘が台湾総統になる日」という原稿を2017年6月6日に発表したときのことを思い出していた。

 そこで私は、郭台銘が台湾総統になるかもしれない理由について、こんな分析をしている。

『台湾で生まれ育って企業人として頂点を極めた野心家にとって、次のステップが政治の世界であるというのは、あながち、ありえない話ではない。台湾では日本同様、過去にビジネス出身者が政治のトップになったケースはない。しかし、同じ東アジアの韓国では前々任の李明博大統領がおり、米国のトランプ大統領の勝利は誰もが思い浮かべるケースだろう。加えて、プーチン、習近平、トランプ、ドゥテルテなど、個性的で強気なキャラクターが世界政治の枢要を占めつつあるなか、何かとその派手な言動で注目を集めてきた郭台銘もそうした条件にあてはまる。台北市長の柯文哲など「素人政治家」が選挙民に好まれる傾向はすでに台湾にも及んでいる』

 いま読み返してみても、それなりに的を射ているような気もする。20兆円近い規模の大企業帝国を作り上げた男にとってさらなるチャレンジは政治における総統のポストしかないのであろう。そして、次にこう書いた。

「素人政治家でユニークなキャラクター、ビジネス出身で強いリーダーシップといった現在の世界の政治トレンドに、テリー・ゴウという人物が合致していることは確かだ」

 テリー・ゴウは、総統選の候補となった場合、そのリーダーシップを全面に打ち出して選挙戦を戦うであろう。いま世界はかつてない未来の見えない不安定な時代に入ろうとしている。どの国でも、少々強引でも、決断力や発信力に定評のある強いリーダーを求める傾向が強まっている。米国のトランプしかり、ロシアのプーチンしかり、日本の安倍晋三しかりだ。

 蔡英文総統の人気不足も一言で言ってしまえばリーダーシップの欠如に起因していると言わざるを得ない。テリー・ゴウのリーダーシップは独裁といっても過言ではないほどだが、その点は保証つきである。

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