日本のトランプへの「加担」
ナドラー委員長は、モラー特別検察官とマクガーン元大統領法律顧問に召喚状を出し、5月末までに議会証言を行うように求めています。仮に公聴会が実現すれば、全米で生中継されることは間違いありません。トランプ大統領の訪日は同月25日です。
トランプ大統領は日本に滞在中もモラー・マクガーン両氏の対策に追われ、「こころ日本にあらず」の状態になる可能性が高くなります。もし両氏の公聴会が開催されて、米国民が彼らの生の声を聴けば、世論調査における「犯罪を犯した」「司法妨害を試みた」及び「うそをついた」の数字は確実に上がるでしょう。
となると、ロシア疑惑で「クロ」と認識されている大統領と新天皇との会見並びに宮中晩さん会は、米国民から一体どのような目で見られるのでしょうか。
トランプ大統領は2月15日、ホワイトハウスの庭ローズガーデンで安倍晋三総理が、同大統領のノーベル平和賞受賞を推薦したと明かしました。この件に関して、親日派のコノリー下院議員や、大統領選挙に出馬しているべト・オルーク元下院議員の政治コンサルタントは、日本がトランプ大統領に「加担」しているとみていました。たとえモラー特別検察官とマクガーン元大統領法律顧問の議会証言が実現しなくても、今回のトランプ訪日はこの否定的感情をさらに強化することは確かです。
従ってトランプ訪日は、「トランプ-安倍」両首脳の関係といった狭義の意味での日米関係の絆を深めるかもしれませんが、米国の無党派層、民主党支持者及び共和党穏健派を含めた広義の意味での両国の関係にはマイナスに働くと言わざるを得ません。
加えて、もしモラー・マクガーン両氏の公聴会が開催されれば、懸案となっている日米の貿易交渉にも少なからぬ影響を与える公算が高まります。というのは、米国民の関心が公聴会に向くのを阻止するために、トランプ大統領は必ず対策を講じていくるからです。
率直に言ってしまえば、トランプ大統領は大きな成果を上げようと農産品の関税引き下げ並びに自動車の数量規制で、日本に大幅な譲歩を迫ってくるかもしれません。さらなる米国製防衛装備品購入の要求も当然含まれるでしょう。
こうなれば、もう日本は「蛇(米国)に睨まれたカエル(日本)」のようになってしまうとしか言いようがありません。結局、トランプ訪日には考慮すべき危険要因が存在しており、同政権下における広義の意味での日米関係の行方は、まったく楽観視できないということです。
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