2022年7月7日(木)

百年レストラン 「ひととき」より

2019年6月26日

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皿鉢料理に加えて会席料理も

高知の山海の幸を大皿に盛り込んだ皿鉢料理。写真は2~3人前18,000円。伊勢海老の左はチャンバラ貝、右は蒲鉾の真ん中にゆで卵を詰めた大丸

 肝心の食事でも工夫がなされた。

 高知で食事といえば、皿鉢(さわち)。大皿に様々な料理をのせ、各自が取って食べる形式だ。

 「ドーンと出された大皿から好きなものを食べる、早いもの勝ちというのが、高知人の気性に合っているんですよ。家庭で最初に大皿料理を出せば、奥さんも一緒に呑める。そういう利点もある食習慣です。

 うちは初代の頃から、皿鉢に加えて会席料理も出すようにしました。先付から始まって、1皿ずつ料理を出す。料亭ならではの醍醐味を楽しんでいただきたかったからです」

 伝統の「土佐会席」を食べてみた。鰹をはじめとする刺身、どろめ(鰯の稚魚)や酒盗(鰹の内臓の塩漬け)など高知ならではの海の幸は、酒にピッタリ。野菜料理の味つけは薄目で、素材を生かす作りになっている。

 冒頭で述べたように戦後いち早く中店を復活させた一方で、本店の再建は断念。「これから発展するのははりまや橋周辺だ」と、中店に賭けた。その決断を下したのが、昭和23年(1948)に養子として迎えられた4代目の憲男氏。英雄さんの父だ。

 「親父は特攻隊の将校で、部下を送り続けました。最後に自分も行くことになっていて、終戦がもう1週間遅かったら、突っ込んでいたといいます。縁あって養子になり、2年後に再建。はりまや橋の方が発展するという判断は正しく、店は増築を重ねました」

 憲男氏は料亭の味と雰囲気を多くの人に楽しんで欲しいと、ランチの提供も始めた。

 「とはいっても、4000円~5000円もする高級弁当だったんです。これでは食べられる人も限られるので、私の代になって2000円台の弁当を出すようにしました」

旬の食材をふんだんに使った昼の弁当2,700円 

 一昨年の8月から、英雄さんの息子の憲史さんが6代目店主に。カナダに留学し、ホテルオークラ神戸で働いた経験のある憲史さんは、ステーキをメインにした会席や出汁巻き卵を挟んだサンドイッチも提供し始めた。

 創業140年を超えてなお、新たなことに挑む姿勢は変わらない。

 

得月楼
<所在地>高知県高知市南はりまや町1−17−3 
とさでん交通デンテツターミナルビル前駅から徒歩約1分、JR土讃線高知駅から徒歩約15分
<営業時間>
11時~14時、17時~22時
<定休日>大晦日と元旦、不定休あり。予約が望ましい。
<問い合わせ先>☎088−882−0101

 

写真・伊藤千晴

  
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◆「ひととき」2019年6月号より

 

 

 

 

 

 

 

 

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