家電口論

2019年10月17日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

パナソニックがオリンピックのメインスポンサーを務めるのはなぜ?

 では、なぜ電機メーカーであるパナソニックは、メインスポンサーをしているのでしょうか?  今のオリンピックのスポンサー料は高額と聞きますし、あの巨大企業マクドナルドが途中で降りることになったのは、スポンサー料と広告効果が合わなかったからだそうで、他人事ながら心配になります。

 取材したところ、回答は、次のようなものでした。

 「パナソニックがメインスポンサーを務めるのは、テレビを売るためだけではありません。オリンピックでいろいろ導入される放送、映像技術と自社との関わりを深めるためです。また、オリンピック・パラリンピックがスポーツを通じて目指す、より良い世界の実現への取り組みは、 "A Better Life, A Better World" というパナソニックの理念に通じ合うという意味も含みます。」

 実際、パナソニックがオリンピックのメインスポンサーを始めた1996年アトランタ五輪で、「IBC(国際放送センター)の設置から運営」。1998年の長野五輪では「DXCPROフォーマットのテスト」。2000年のシドニーでは「公式映像記録フォーマットに採用されたDVCPRO 50のサポート」などと・・・・。オリンピック毎、用いられる最新の映像技術のサポートを務めています。

 オリンピックは、全てがライブ。しかも、それを地球上の人々が見るのですから、失敗が許されません。逆な言い方をすると大変に価値ある経験ができます。クルマも、F1などの大舞台のレース参戦で、技術が飛躍的に上がります。オリンピックは、電機メーカーにとって、一種のサーキットなのかも知れません。

総合メーカーとしてインフラ整備にも

 パナソニックは日本を代表する電機メーカーで、電器店、量販店に行って、パナソニックの家電がないことは、まずありません。しかし、2014年、電気自動車メーカーテスラのギガファクトリー建設に参画したことに 象徴される様に、今では家電はパナソニックの一事業に過ぎず、パナソニック自体、B to Cビジネス(民生用ビジネス)ではなく、Bto Bビジネス(業務用ビジネス)がメインです。しかもその分野は多岐に渡ります。

 「車載事業」をはじめ、製造・物流・流通の自動化や省人化を実現する「ソリューション事業」、「住宅事業」「デバイス事業」 等など。まさに、どんなとこにもパナソニックと言う感じです。

 特に、今回の東京開催は「地元」。放送、映像だけでなく、積極的に動いています。名付けて、「5スマート」と「ネクスト3」。

 「5スマート」とは「スマートトランスポーテーション」「スマートコミュニティ」「スマートコミュニメーション」「スマートペイメント」「スマートセキュリティ」の5つです。具体的には、トランスポーテーションは「サイクルシェア」「バッテリーシェア」。コミュニティーは「無電柱化に伴う地上設備の上の新規サイネージビジネス」「暑さ対策」。コミュニケーションは「多言語翻訳」「光ID」「観光ソリューション」。ペイメントは「ID連携による完全キャッシュレス」。セキュリティは「映像監視システム」です。

 中でも私が注目しているのは、「暑さ対策」。これは直径10μm以下の濡れにくいミストを利用したグリーンエアコンを中心とした事業です。とにかく日本だけでなく、世界的に夏の暑さは異常になっていますから、このまま行くと夏のイベントはすべてNGになっ可能性がります。昔は夏休みと言えば合宿。目一杯運動する季節でしたが、このまま進むと、運動全面禁止になりかねません。もし東京五輪のマラソンで成功を収めたら、最高のお墨付きをもらったも同然ですから、一躍海外でも採用されビッグビジネスになります。新しいビジネスの創出です。

 また、ネクスト3は「アクセシビリティ」「ウェルネス」「スポーツ」のことで、「ロボット電動車いす安全制御」「次世代フィットネスクラブ」「スポーツ映像解析、スタジアムソリューション」です。

 中でも「スポーツ映像解析」は、スポーツマンガのように、そのスポーツがより分かりやすくなりますので、ネクストと言わず是非オリンピックに間に合わせて欲しい技術ですね。

 このように、パナソニックはいろいろなビジネスを展開しており、直接・間接需要を全部合わせると、累計関連販売2000億円を超える見込みだそうです。地元開催でもありますが、スゴいと思いましたね。テレビの売りを問題にしないわけです。

 その上、オリンピックを契機に創出する新規ビジネスは、2022年までに累計700億円を見込むそうです。スポーツの祭典はある意味、技術の祭典、ビジネスの祭典でもあるようです。

  
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