ラグビーをよく知らない記者に対してもイロハを教えてくれる
しかしながら今大会で日本のラグビー界は諸手を挙げながらファン、そしてメディアの〝にわか層〟を大歓迎し、率先して新規開拓に務めた。選手やチームスタッフ、大会関係者は非常に協力的で、それこそラグビーをよく知らない記者に対してもイロハを教えてくれるぐらいの謙虚な姿勢で接している取材対象者も多くいると聞く。
今大会で米国代表を率いたギャリー・ゴールド・ヘッドコーチ(HC)に以前、こちらの陳腐な質問にも面倒臭そうにせず、とても紳士的で丁寧な振る舞いを見せながら取材に応対してもらい、感動したことがあった。その思いをすぐ本人にぶつけてみると、こんな答えが返ってきたのを覚えている。
「別に驚くことではない。私だけじゃなく多くのラガーマンは皆、同じ振る舞いを見せると思う。私が常に憤っていたとしたらラグビーに携わる資格はない。ラグビーは相手との戦いだが、憎しみ合う戦争じゃない。お互いがリスペクトし合うからこそ成り立つスポーツだ。時にエキサイトしてしまうことも確かにあるが、試合が終わればノーサイド。シェイクハンドだ。チームメートもすべて同じ思いを共有している。品位、情熱、結束、規律、尊敬――。
これらをラグビーに携わる誰もが持ち合わせていると信じている。その精神を享受してほしいからこそ、私はラグビーの素晴らしさをたくさんの人に伝えたい。きっと日本のラガーマン、ラグビー関係者たちも、これは共通の考えだろうね」
ゴールド氏はかつて神戸製鋼でHCを務めた経験もあるだけに、日本ラグビーを語る言葉には説得力がある。W杯で躍進を遂げた日本代表、そして爆発した国内でのラグビー人気。その裏には〝にわかファン〟にも門戸を広げ、多くの人がラグビーを好きになる入口を整えていた日本のラガーマン、そして多くの関係者たちの謙虚な姿勢があったことを忘れてはいけない。
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