2022年12月6日(火)

WEDGE REPORT

2019年11月6日

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木村正人 (きむら・まさと)

国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト。元産経新聞ロンドン支局長。米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員、慶應義塾大学法科大学院非常勤講師などを歴任し、2012年独立。近書に『欧州絶望の現場を歩く』(ウェッジ)。
 

──次の10~30年、世界の新しい秩序はどうなるか。

エモット:現在は、米外交誌『フォーリン・アフェアーズ』の元編集長ファリード・ザカリア氏が2008年の著書『アメリカ後の世界』で説明している世界だと思う。米国は依然として世界で最も強力な国だが、他の国々、特に中国のパワーが急成長している。

 世界は米ソ冷戦時代のように、紛争、冷戦、協力のいずれかの形で米中という二つの大国によって再び支配されるのか。それとも、インド、ブラジル、日本、アフリカの国々も大きな存在感を持ち、超大国による強力な覇権が存在せず、パワーが分散していく傾向が強まるのか。私は後者のパワーが分散した多極型の世界を望んでいる。

──どちらの可能性の方が高いのか。

エモット:多極型システムが形成される可能性の方が高いが、米中を中心に別々の同盟が形成された場合、二極型システムを推し進めることが可能になる。おそらく、それはドナルド・トランプ米大統領が行うような政策によって導かれる世界だ。

米中を中心に別々の同盟が形成されれば、二極型システムが進む可能性がある(REUTERS/AFLO)

 しかし、もっと先見性に富んだ対応は、単純な二極型システムを回避するため、米国と欧州ではるかに広範な同盟と友好のネットワークを形成することだ。非常に広範囲の国々の間で力のバランスを取るべきだが、二極型システムになる可能性は排除できない。

──二度の大戦を経て英国から米国に覇権が移り、基軸通貨も英ポンドから米ドルに変わった。今後、基軸通貨はどうなるか。

エモット:米国が世界最大の経済大国になり、ポンドからドルに基軸通貨が交代する前に大きな一連のポンド危機(第二次世界大戦の戦費調達の影響などで英国の財政不安が強まるなど)が発生した。米国がドル資産の流動性を低下させ、ドルを使ったビジネスのしやすさを減じるなど、通貨としての信頼性を損なう劇的な危機を経ない限り、ドルは基軸通貨のままだろう。今のところ、欧州単一通貨ユーロにも中国の人民元にもドルの地位を脅かそうという政治的な意思は見られない。

──トランプは武力行使を嫌がっているように見える。

エモット:トランプは米史上最長となったアフガニスタンや、イラクとの戦争に対する米国内の反応を見ている。イランと戦争になる恐れは残るものの、彼の戦争へのためらいは後継者にも引き継がれると思う。トランプ時代は後から振り返ると、米外交の宥和(ゆうわ)期であり、タカ派よりもハト派が多かったと見られることになるだろう。

イラク国内の治安悪化を招き、泥沼化したイラク戦争
(SCOTT NELSON/GETTYIMAGES)

 ジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官の解任は、それを反映している。トランプは軍隊ではなく貿易を使って戦争するのを好む。米国史上初めての敗北となったベトナム戦争が米国の外交政策に影響を与えたように、米国は戦争を避ける期間に入っている。

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