──中国支配が強まるのに反対して香港で大規模デモが起きた。中国はリベラルな民主国家への道を進むのか。
エモット:中国は権力を法の支配にもっと幅広く従わせ、中国共産党による一党支配を脱却し、公的な説明責任を求めるシステムに変えていかなければならなくなるだろう。豊かになるにつれ、習近平国家主席が支配を再確立しようとする手法は失敗に終わる可能性が高くなる。習近平の後、より権力が分散し、より説明責任を求められる新しい動きが出てくる。それが西洋流の自由民主主義かどうかは分からないが。
──インドは第二の中国になるのか。
エモット:インドは今後も強力に発展し、世界にとって大きな利益になるが、中国ほど速く成長するとは思わない。中国経済は5~7年ごとに経済規模が2倍に拡大したが、インドは10~12年ほどかかっている。インドが経済大国の地位に達し、政治的な帰結によって国際社会で支配的な経済を持つようになるまでには長く時間がかかる。
インドは中央集権的ではない。それが中国のような速度で成長しない理由の一つだ。インドの一部地域は急速に成長しているが、他の地域は遅れている。第二に、官僚主義や部族主義など、市場の自由化を阻む強い既得権がある。識字率と高校教育のレベルは非常に不均一で、社会が不平等だ。インドは教育で大きな成功を収められなければ日本や韓国、中国の後に続くことはできない。
──アフリカで人口が増え続け、アフリカ系移民の増加が欧州を脅かしている。
エモット:今後30年で非常に重要な問題となるのは、アフリカでどのような経済発展が起こるかだ。急成長するアフリカは、出生率が非常に高く、人口が急速に増加している最後の大陸だ。アフリカの闘いは、アジアの成長を実現させたのと同じ教育の発展を、経済成長と税収によって確立できるかにかかっている。
そうすれば近代的な経済成長と出生率の低下につながる可能性がある。欧州にとってもアフリカの人口抑制が最大の課題になる。わずかな割合のアフリカ系移民が欧州に流入しただけで大問題になるからだ。深刻な貧困問題を抱えるサハラ砂漠より南のアフリカにおける教育と経済の発展がカギを握る。
──ロシアは経済が衰退しながらも、プーチン大統領がハイブリッド戦争や資源外交を駆使して国際社会への影響力を維持している。
エモット:ロシアは限られた経済力、軍事力の中で国際的な影響力を維持するのに長(た)けているが、石油・天然ガス、その他の資源価格に大きく依存している。ロシアにとって最大の脅威は化石燃料経済の終焉(しゅうえん))だ。私がロシアの指導者なら、輸出と政府収入の源泉である石油・天然ガスの重要性を減らす脱炭素経済の到来を恐れる。