世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年12月3日

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 ニューヨーク・タイムズ紙は、中国共産党幹部から入手したらしい(もちろん入手元は安全上の理由から秘密だろう)大量の内部文書(全部で403頁、24文書が含まれていると言う)の内容を紹介する記事を11月16日に掲載した。その内容とは、中国共産党による新疆における大規模な弾圧に関するものである。中国共産党が、習近平総書記の指示の下で、大々的にウイグル族の拘束と弾圧を行なっていることを裏付けるものとなっている。

(stockce/chelovek//iStock / Getty Images Plus)

 記事によると、現在の新疆におけるウイグル弾圧の大きなきっかけは、2014年の習近平総書記の新疆視察に遡る。その視察前後に、複数の大規模殺傷事件が発生したことを受けて、習近平総書記は一連のスピーチを行なった。習近平は、スピーチの中で、「目には目を、微塵も慈悲を見せてはならない」と話し、新疆において治安を回復するために、強硬路線を取ることを打ち出した。習近平は、イスラム過激主義に対して、「独裁的」手段を用いることも呼びかけている。一方で、習近平はウイグル族を差別してはならず、彼らの信仰の自由と権利を尊重すべきだとも話している。ウイグル族と漢族の間の自然な摩擦に過剰反応したり、中国においてイスラムを完全に消滅させようと考えたりすべきではないとも警告している。とはいえ、習近平が、新疆の弾圧への方向転換を行ったことは間違いない。 

 この内部文書の米メディアへの流出で、中国共産党が2014年以来、どのような対新疆政策をとってきたかが白日の下にさらされた。細かな解説はしないが、問題点を列挙するだけで、ものごとの深刻さと重大さは理できるであろう。 

 中国共産党内において少数民族政策について強硬策と柔軟策の2つの路線争いは常にある。習近平は強硬策に舵を切った。新疆問題は、香港問題とともに、中国の政局に影響を及ぼす。 

 外部と強いコネクションを持つ新疆イスラム教徒の徹底弾圧は不可能だろう。中国の少数民族政策の成否は、生活水準の向上だけではなく、彼らの宗教を含む文化に対する共産党の寛容度、つまり理解と支持がより重要となる。屯田兵を増やし、文化を否定することでは失敗する。アメとムチがいると言うことだが、アメの方が重要だ。中国は内部問題をさらに深刻化させた。 

 この時期に内部文書が流出したことの意味は大きい。習近平になり、内部の締め付けを強めたにもかかわらず流出した。中国国内の厳しい監視網をかいくぐって香港まで持ち出せたということになる。 

 ここに大きな「政治」を感じる。つまり、この文書が国際社会に流布することに利益を見出す党内グループがあるということだ。習近平のイメージはさらに損なわれる。2012年のブルームバーグによる習近平ファミリーの不正蓄財疑惑報道より打撃は遙かに大きいだろう。

  
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