FC今治がJリーグ昇格を決めた今シーズン。何もかもが上手く行っているのかといえば、そうではない。シーズン観客動員数が一度も4000人に到達出来なかったのはスタッフの中でも大きな悔しさとして残っていることが感じ取れた。矢野将文社長も集客に関しては平均観客動員数3300人の目標に達していないので上手くいっている感じもないと、最終節のサポーターへ向けての挨拶で悔しさを語った。
J3昇格を決めたFC今治。しかし、ゴールはここではない。J2には1万人入場可能なスタジアムが必要になる。現状では観客動員は4000人以下の観客に留まっているが、すでにその舞台を見据えて1万人の動員に向けた“戦略”を動かしている。
J2規定のスタジアム建設が実現化した場合、それを今後どう埋めていくのか。厳しいようだが、4000人を集めることが出来なかったのにその倍以上を数年後に満員に出来るかという疑問は自然と出てくる。
矢野氏は「出来るのではなく、やる。何か突拍子のないものをやっていくというよりは今やっている事業をしっかりやっていくこと」と答える。そのためには今治市の深堀、そして西条市や四国中央市、新居浜市といった東予地域への展開を鍵として挙げる。
現状、スタジアムへ観戦に来ている人の7割が今治市民。それでも矢野氏は「リピーターも多いので、来たことがあるのは1~2万人。まだ来たことない今治市民も多くいる」と指摘する。そのために、「生活の中で欠かせない存在になっていくこと。例えば15試合中3試合来ていた人に6試合来てもらう。より多くの人たちにもっと応援しようと思ってもらうこと。その積み重ね」と話す。
残りの3割のうち、1割は松山市、それ以外は西条市、四国中央市、新居浜市および県外がいる。会場でも愛媛FCサポーターだが、FC今治の存在も応援しているという人もいた。そして岡山から家族を連れてやってくる人もいる。この3市からの集客アップが今後より見込めると考える。
すでにその地域での活動は展開している。今年から新居浜市では、地元の日光商事からサポートを受け、サッカークリニックを定期開催。そして西条市からはFC今治のJ3昇格を祝福して太鼓台が初めて今治市を巡業し、その終着点がありがとうサービス.夢スタジアムだった。今治市の外へ向けた活動を増やしていくことで東予地域からのスポンサードも徐々に増えているという効果を生み出している。
Jリーグ昇格となると、今まで以上にアウェイサポーターの来場も見込める。そしてしまなみ街道というコンテンツを活用してのアウェイツーリズムもFC今治が持つマーケットの1つとなる。実際にその観光資源を活かした温泉やウォーキングを含めたツアーなども計画中だ。アウェイサポーターは応援するクラブを追いかけて日本全国を飛び回る。せっかく足を運んでくれる人達がいるのにスタジアムだけに留めておくのはもったいない。試合へ来るついでに今治や周辺地域によってもらうことで観光を楽しんでもらい、名産を買ってもらう。この体験を提供できるのは今治の特徴の一つでもある。
鍵は「サッカーだけで勝負しないこと」。遠方から行きたいと思わせるカスタマージャーニーをどう描かせるかが今後の鍵ともなってくる。そしてもちろん地元の人達の更なる支援も欠かせない。