Wedge REPORT

2020年1月20日

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岡田 豊 (おかだ・ゆたか)

みずほ総合研究所調査本部主任研究員

1967年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、現在のみずほ総合研究所の前身である富士総合研究所に入社。「第2期『まち・ひと・しごと創生総合戦略』の策定に向けた KPI 検討会」委員などを兼任。

 このように、県庁所在地などの地域経済の中心都市へ人口が集中していく背景にも、若い女性の地域経済の中心都市への移動がある。経済圏全体では転出超過となっている名古屋圏、大阪圏でも同様で、例えば、名古屋圏では若い女性が転出超過であるが、その中心都市である名古屋市では若い女性は大幅な転入超過である。サービス経済化が進んでいく中で、地域経済においても、郊外に住む若者がサービス業の発達した地域経済の中心都市で就業する動きが広がっている。

 こうして中心都市に集まった人口は、次に東京圏へ転出していく。総務省統計局の「住民基本台帳人口移動報告」によると、18年の東京圏への転入者は東京圏以外からが28万人にのぼるが、そのうち名古屋圏と大阪圏からが7万人、三大都市圏以外の道県庁所在地からが7万人を占めている。

 加えて、中心都市で目立つのは、25歳代以上の年齢層で流出が進んでいることだ。東京都区部における私立大学の定員管理の厳格化により、10歳代後半の東京圏への移動は抑制されているものの、25~39歳では、名古屋圏は転入超過から転出超過へ転換し、大阪圏は転出超過が拡大している(図3)。

(出所)総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」各年版より、みずほ総合研究所作成
(注)転入人口と転出人口を差し引きした数。マイナスは転出超過 写真を拡大

 現在のサービス業では、各都市別で仕事の内容に大きな差はつきにくい。そうなると、より給与水準の高い地域への転職を考えやすくなる。未婚の若者にとって、多少の生活費の上昇があったとしても、それを上回る賃金の上昇が見込める東京を頂点とした大都市への転職が選ばれるのは自然なことといえる。

 人をひきつけるその地域特有の新たな産業が興らない限り、非東京圏の郊外部→地域経済の中心都市→東京圏というトレンドは、今後も続くことになる。

課題解決型で
サービス業振興を

 こうした現実を踏まえ、多くの地域は、地方創生により人口がV字回復するような夢物語を構想するのではなく、第1期の結果を反省し、全自治体の通り一辺倒の地方創生を改め、中心都市を核にした持続可能な地域づくりに転換する必要がある。

 その中核となるべき地域経済の中心都市が周辺都市から若者を集めながら東京圏へ流出させる「破れたバケツ」のようになっている状態は、今後の日本の成長力の維持向上や大規模災害発生のリスクを考えると望ましい状況ではない。

 地域経済の中心都市は、医療や介護、交通などさまざまな分野において課題先進地域となる。中心都市が、その地域ごとの特性やニーズにあわせて、また、近隣で作り出される農林水産物や工業製品に何らかの要素を加えて、新たな産業を振興する必要がある。

 それぞれの地域ごとのニーズに応じることで、東京圏とは違うオリジナリティあふれるサービス業を振興し、日本人だけでなく外国人をもひきつけるようになることができうる。それにより、各中心都市が人口の受け皿として機能し、東京圏への転出を抑えることができるようになる。非東京圏で4年制大学卒業の女性が望む仕事を創出するという視点も重要であろう。

 行政は、民業の需要に応じて、規制緩和などを行い、5Gなどの技術革新をいち早くサービスに取り入れることができる環境を整えることが必要だ。「ミニ東京化」しない工夫が地域経済の中心都市に求められよう。

 その結果、世界的な大都市と比べて生産性に劣るとされる東京圏が、地域経済の中心都市の活性化に刺激を受け、自らも活性化していくような展開こそ望ましい将来像といえよう。

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■幻想の地方創生  東京一極集中は止まらない
Part 1  地方創生の”厳しい現実” 「破れたバケツ」状態の人口流出を防げ
Part 2      人口争奪戦で疲弊する自治体 ゼロサムゲームでは意味がない
Interview 地方創生の生みの親が語る、第二期へ向けた課題 増田寛也氏
Part 3    「観光で地方創生」の裏で乱立する「予算依存型DMO」
Part 4      全ての自治体は自立できない 広域連携を促す交付税改革を
Column    農村から都市に移る国政の関心 地方の”自律”に向けた選挙制度とは?

  
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◆Wedge2020年2月号より

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 

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