東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の転入超過数は90年代後半以降プラスで推移し、近年再び増勢が強まっている。一方、三大都市圏である名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)と大阪圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)でさえも、転出超過は6年連続となっている(下図1)。地方創生の大号令にもかかわらず、「東京一人勝ち」が続いており、第1期地方創生が終わる19年度までに東京圏の転入と転出を均衡させるというKPIが未達に終わることは確実である。
東京圏への転入超過で注目されるのは女性の転入超過である。戦後の東京圏への人口流入の高まりは高度成長期、バブル期、90年代後半以降と三度あるが、90年代後半以降は、女性の東京圏への転入超過が多い。
この背景として、女性の高学歴化を上げることができる。4年制大学進学率を見ると、その男女格差は1975年には28・3ポイント(男性41%、女性12・7%)であったが、90年代に入って女性の同進学率が上昇し、2018年には男女格差は6・2ポイント(男性56・3%、女性50・1%)まで縮まっている。既に、4年制大学卒業生の就職数では男女がほぼ拮抗(きっこう)しており、人出不足が続く中、4年制大学を卒業した女性が企業にとって戦力の根幹になっているのがわかる。
一方、活況を呈している製造業を抱える名古屋圏を見ると、20歳代の男性が転入超過であるにもかかわらず、女性は一転して転出超過である。女性の多くは、サービス業への就職を志向する傾向があり、このためサービス業の集中度が高い東京圏での就業が目指されているものと思われる。
「破れたバケツ」のような
地域経済の中心都市
地域別人口動向では東京圏一極集中が注目されがちであるが、近年そして今後も続くと見込まれるトレンドとして、非東京圏の郊外部→地域経済の中心都市→東京圏という人口の流れが想起される。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」(18年推計)を見ると、15年から45年にかけて日本全体に占める東京圏の人口は3・4%上昇するが、各都道府県に占める各県庁所在地の人口が東京圏と同じレベル(3・4%)以上で増加するところは24道府県にのぼる(図2)。
例えば、15年から45年にかけて西日本の府県で最大の人口減少率となる高知県では、県内人口は32%減少する中、高知県に占める高知市の人口割合は15年の46%から45年の54%へ大幅増加し、高知市は高知県の半分以上の人口を抱えることになる。