世界の記述

2020年1月17日

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宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

1976年、長野県生まれ。18歳で単身アメリカに渡り、ウエスト・バージニア大学外国語学部を卒業。その後、スペイン・バルセロナ大学大学院で国際論修士、同大学院コロンビア・ジャーナリズム・スクールで、ジャーナリズム修士。スペインの全国紙「エルペリオディコ」で記者経験後、南仏ペルピニョンとバルセロナを拠点にするフリー・ジャーナリストとして、欧州に止まらず、世界各地を取材し、月刊誌『世界』(岩波書店)、『文藝春秋』(文藝春秋)等で、報道記事やルポルタージュを発表している。共同通信・特約記者を兼務し、フランス語、スペイン語、英語、ポルトガル語、カタラン語を話す。著書に、『卵子探しています』(小学館)などがある。

 イタリア人に最も好まれているリーダーは誰か――。同国の世論調査会社「デモス」が昨年末に発表した調査によると、国内権威者に右派政党「同盟」党首のマッテオ・サルビーニ氏、世界的権威者にローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇が選出された。

art12321/iStock / Getty Images Plus

 国内のリーダーとして、サルビーニ氏は21%と圧倒的な人気票を集めたが、不人気票も劣らず、34%と最高を記録した。2位は、ジュセッペ・コンテ首相の12%だった。

 一方、国際的なリーダーに選ばれたフランシスコ教皇は8%と低い数字だが、最高をマーク。2位は、環境活動家グレタ・トゥンベリさんの5%だった。

 この結果から、イタリア人は、価値観が極端に異なるリーダー2人を選んでいると判断できる。

 「同盟」のサルビーニ氏は、反欧州連合(EU)、反グローバル主義、反移民・難民などを唱え、極右の政治家として「欧州で最も危険な人物」と称されている。だが同党の国内支持率はトップで、30%を超える。

 昨年8月まで副首相兼内相だったサルビーニ氏は、同年7月に難民131人の入国を拒否。カターニア裁判所は、調査を始めていた。しかし同氏は「裁判をやるならそれでもいい。私には数百万人ものイタリア人が味方についている」と誇示した。

 対するフランシスコ教皇は、カトリック教会のトップに君臨し、前者とは正反対の理念やイメージを普及する。弱者を助け、理解し、憎まずに愛する……。

 日刊紙「レプッブリカ」は、世界的なリーダーとしての教皇の支持は国内最高とはいえ、8%しか集まらない背景には、難民受け入れに寛大であるためで、「同盟」支持者らの票を得難いからだと報じる。

 さらに、神聖な印象の強いローマ・カトリック教会も、ここ数年、性的児童虐待問題が次々と表面化し、ネガティブな報道も増えている。

 大晦日の晩、女性信者に手を強く握られた教皇が、女性の手を叩く場面がテレビに流れた。普段になく怒った表情を見せた教皇に対し、ソーシャルネットワーク(SNS)上では「教会のトップに相応しくない」「神聖なお仕置きか」など、さまざまな批判や皮肉が飛び交った。

 この両極端な2人が、現在、イタリアで最も好まれている。一部の国民は宗教から距離を置き、サルビーニ氏のようなカリスマ政治家に生きるための救いを求め、一部の国民は信仰の世界にこそ救いがあると信じている。

 この相反する2人の存在が、今のイタリア社会を複雑にしているのかもしれない。

  
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