2022年11月30日(水)

インド経済を読む

2020年1月20日

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野瀬大樹 (のせ・ひろき)

公認会計士・税理士

大手監査法人にて、株式公開支援業務・法定監査業務・内部統制構築業務などに関わったのちに独立し、野瀬公認会計士事務所を設立。インドのニューデリーに、日本企業のインド進出を支援するNAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、代表に就任。日本インドの双方より、日系企業へのコンサルティング業務を行っている。近著に『お金儲けは「インド式」に学べ!』(ビジネス社)がある。

[著書]

インドで強い力を持つ「インド小売業連盟」

 それはインドの多くの小売業者が所属する「インド小売業連盟(CAIT)」だ。彼らは今回のベゾス氏の訪問を以前から強く非難しており、

 「これはインドへの『投資』ではなく、グローバル企業Amazonの単なる巨大プロモーションだ」

 との声明を発表している。そして、さらにインドの300の都市でのAmazonへの抗議活動をも計画しているのだ。

 彼らはさらに続ける。

 「小売業の電子化が大切なのは我々も十分理解している。しかしそれはAmazonという一企業が設定した枠の中でやるべきものだろうか。すでにインド政府はその『デジタルインディアプログラム』の中で小規模企業の電子化を支援する政策を発表している。我々はそういった施策を利用し、必要であれば政府に働きかけるべきだ」

 CAITはAmazonというGAFAの一角を占める巨大な世界企業がインドの小売業を完全に支配化に置き、そこに所属することになる1000万の小売業者が単なるAmazonのフランチャイズになることを懸念しているのだ。

 実際インドでは従来より外資による小売業支配への抵抗が根強く、民主主義国家であり定期的に選挙があるインドでは、全国に多数散らばる小売業者のこういった声を無視するわけにはいかない。そのため、今でも消費者向けの小売に関してはまだ外資規制が残っており、かつその規制は実際には達成が難しいものが多い。

 小売業は事実上まだ外資には門戸が閉ざされている状態と言ってもよいだろう。実際Amazonも小売業としての参入ではなく、インドの業者へのプラットホームを提供するという形での参入の形を取っている。

 そしてAmazonに加え、こちらも外資であるウォルマート傘下のFlipkartという二大外資系企業の寡占状態となっているインドのEコマース業界の取引慣行について、インドの公正取引委員会が調査に乗り出した。この調査が発表されたのは、なんとベゾス氏のインド到着のわずか数時間前。

 偶然とは思えないこのタイミングには過熱するCAITからの批難に対しての政府の忖度(そんたく)という見方も根強い。インドで最近鳴り物入りで販売された中国メーカーOPPOのスマホの新モデルがAmazon「でしか」購入できない事態も昨年問題になったばかりで、それは今回のこの調査の目的の一つだと言われている。

 こういったインドの業界団体CAITの反Amazonキャンペーンやインド当局の調査への配慮もあったのだろう。ベゾス氏はその演説の中で終止インドという国を持ち上げ、いかにAmazonがインドにとって有益であるかの説明に腐心しているように見えた。

 「我々は侵略者ではない。成長するインド市場の小売業者に力を与えるために来たのだ。すでにインドには50億ドルの投資を行い、6万人の雇用を生み出し、利益を得ている小売業者の数はすでに50万人を超えている。ディワリ(インドで一番のお祭り)の時期には彼らは我々のプラットフォームを利用してリッチになった。将来的にはAmazonを通してインドから大量の商品を海外に向けて販売することも可能になるだろうと」と。

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