2024年7月20日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年5月8日

 しかし、高利貸への依存、放漫で無計画な事業経営、浪費生活を続けた結果、損失の補填ができないまま借金で金利の支払いに充てるという自転車操業に陥った。呉英の代理弁護人によると、保有する不動産などを売却すれば借金は返済可能だったにもかかわらず、呉英は突然、地元東陽市公安局に身柄を拘束されたという。呉英は裁判の過程で賄賂を送っていた役人の名前などを明らかにしているが、一方、東陽市の役人十数人が呉英の死刑判決を支持する旨の文書を裁判所に提出している。「役人は自らの保身のために呉英を死刑に追いやろうとしている」と憤る声が次々に寄せられた。

呉英は詐欺を働く意図があったのか?

 呉英の事案の主な争点は、金を不特定多数の一般大衆から借りたか、詐欺を働く意図があったかどうかにある。呉英は11人から金を借りているが、いずれも旧知の仲介人や金融業者であり、「一般大衆」とは言い難い。高級な車や宝石を買い漁っていた事実があるが、呉英側は、それらは手掛けていたブライダル事業などに利用する目的であり、詐欺目的ではなかったと主張する。

 刑法199条は集金詐欺罪に関し、その金額が極めて莫大で「国家と国民の利益に特に重大な損失を与えた」場合は無期懲役か死刑に処すとしている。一方、192条は「違法に占有することを目的に詐欺的方法で違法に出資を募り、その金額が大きい場合は5年以上の懲役或いは15日以上6カ月以下の拘役(短期の労役)及び2万元以上20万元以下の罰金とする。金額が特に大きいか、状況が特に深刻なものは、10年以上の懲役或いは無期懲役とする」と規定する。

 呉英を死刑にするなら、国家と国民に大きな損失を与えたことをどのように証明するのか。そもそも経済犯罪に死刑という極刑を適用すべきなのか。銀行が金を貸さないから中小企業は民間金融に頼らざるを得ないのではないかという声が上がっている。

「違法集金詐欺罪」で死刑執行された者も

 呉英のケースは様々なメディアに取り上げられ、広く注目された。最高裁判所が死刑判決を差し戻したのは、世論の高まりが背景にあるとも考えられる。

 しかし、これまでに呉英と同じような罪状で重い罪に問われ、既に死刑が執行された事例もある。雑誌『財新』のウェブ版が整理した資料によると、1993年から2011年までに21人が数千万元から数十億元の資金を違法に集めたとして、違法集金詐欺罪や違法経営罪、違法公衆預金吸収罪で起訴されている(90年代の2つの事案は違法集金詐欺罪がなかったため汚職罪や賄賂罪が適用されている)。そのうち、死刑判決は10件、執行猶予付き死刑判決は1件、懲役刑は6件である。この数字は公開データのみを整理したものであり、実際はこれよりずっと多いと見られる。

これだけある「量刑の開き」

 京衡弁護士集団(本社・浙江省)の代表を務め、司法改革論争の著名な論客でもある陳有西弁護士は、12年2月7日、北京で開催された「金融秩序と司法公正研究会」において、自ら弁護人として関わってきたものを含め、いくつかの関連の裁判を紹介している。

 そのうち、浙江省の企業について見ると、麗水市の某女性経営者の7億900万元の違法集金詐欺罪については、既に死刑が執行された。55億元の違法集金詐欺罪に問われた銀泰不動産の場合、一審は死刑で、現在上訴中である。38億元の違法集金詐欺罪で5人の理事長が逮捕された天一証券の裁判は、被告に有利に進んだ結果(陳弁護士が弁護を担当)、4人の理事長が刑事処罰を免れ、総経理は懲役2年、執行猶予3年に処された。

 負債額20億元(うち民間高利貸からの借金は8億元)の南望集団と同25億元(同10億元)の華倫公司については、民事手続きを通して解決したという。負債額22億元(同10億元)の温州泰順県の立人集団については、経営者が居住監視(法的に定められた拘留施設以外の場所で監視を行うこと)の状態に置かれている。


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