2024年7月20日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年5月8日

 このように、同じ違法集金詐欺罪に問われる場合でも、数年の懲役刑から死刑まで科される量刑に大きな差がある。また、刑事責任を問われるケースもあれば、民事の破産・再生手続きを行う企業もある。

「鬼の洗顔」、「ロケットに座る」
拷問で自白の強要を迫る

 民営企業家は違法集金詐欺罪などの重い罪を着せられるだけでなく、さまざまな手段によって苦境に陥れられている。ここに具体例を2つ紹介しよう(*主に雑誌『財新』、2011年第11期の記事を参考にした)。

 1つ目は、ひどい拷問で自白の強要を迫られた自動車販売会社・南陽奥奔の社長・楊金徳の事例だ。南陽奥奔は某企業との権利侵害に関する裁判で敗訴したが、楊は結果に納得していなかった。しかし、裁判所が賠償金の支払いを名目に強制的に会社の銀行預金を引き出したため、憤った楊と30人あまりの従業員は裁判所の入口を取り囲んで抗議した。さらに、北京に陳情に行き、裁判所の違法行為への対応を求めた。

 11年10月、区の共産党・政法委員会の幹部が北京に出向き、問題解決を約束したため、陳情者たちは南陽に戻ったが、楊は逮捕されてしまう。そして、楊は7月の一審で、「黒社会の性質を持つ組織を組織・指導した」など6つの罪で懲役20年の、南陽奥奔の従業員22名も様々な刑罰を受けた。

 楊は取り調べの間、供述書への署名を拒否したため、「オオカミと共に舞う」(シェパード犬と一緒に部屋に入れる)、「鬼の洗顔」(警察犬に顔を舐めさせる)、「ロケットに座る」(ビール瓶を肛門の中に挿入する)などと名付けられた15種類の拷問を受けたという。二審を担当予定の弁護士が楊に接見した際、楊には左目、右耳、腕、足に傷があり、全身麻痺、両足の筋肉委縮の症状があり、失禁までしていた。拷問で傷ついた楊の写真がインターネット上で公開され、話題になった。

 一方で、揚州市政府は市の関連機関に調査を依頼し、自白の強要はなかったと結論付けている。楊は党・政府及び裁判所による一連の対応は、集団で北京に陳情に行った楊に対する報復的措置であると見ている。楊の弁護士は、「南陽奥奔は合法的に設立された自動車販売会社であり、黒社会の性質など帯びておらず、社会に危害を加えるような活動も行っていない」と述べている。現在、二審でどのような結果が出るかが注目されている。

飼料会社の牧羊集団が受けた事例

 次は江蘇省揚州市に本部を置く「牧羊集団」の事例だ。牧羊集団は08年の売上高が18億800万元、09年の売上高と新規契約額が共に20億元を突破しており、飼料機械の分野において中国ナンバーワン、世界第3位の企業である。02年に民営株式会社に改組された後、5大株主が理事となって理事会を設立したが、5人の理事のうち3人が江区(区は市の下の行政単位)の党組織などに取り調べを受けたり、拘禁されたりし、そのうち1人は強制的に株式譲渡を承認させられている。

 確固とした証拠を提示するのは難しいが、一連のいきさつを見れば、区政府・党組織の関係者などが、関係の近い理事の株式を増やそうと画策したと疑われても仕方がないだろう。以下、その内容を説明しよう。

 まず、民営化当初の理事らの所有株式比率は、元工場長の徐有輝が24.05%、徐斌が15.74%、許栄華が15.51%、李敏悦が15.74%、範天銘が15.61%、他の職員らが9.48%、国有資産監督管理委員会(国資委*)が3.87%であった。理事会は5大株主(2人の徐、許、李、範)で構成され、初代理事会の理事長は徐有輝、総裁は範天銘であった。05年から08年の第二期理事会の理事長は李敏悦、総裁は第一期と同じく範天銘であった。

(*)国有資産監督管理委員会:国有企業改革の一環で03年に設置された。これにより、政府の企業管理と資産管理の機能が分離され、政府がマクロコントロールの観点から企業運営の管理・監督を行う一方で、国資委は株主として企業の資産管理及び資本運営に関わることになった。中央の国務院だけでなく、地方政府も国資委を設けている。


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