2024年11月25日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年2月18日

豊富なデータ対「勢い」

 サンダース上院議員にはブティジェッジ前市長に対して、地上戦におけるアドバンテージが存在します。16年民主党党員集会・予備選挙でサンダース陣営が作成した各州における有権者名簿です。サンダース陣営はこの有権者名簿をアップデートして、戸別訪問及び電話による支持要請といった地上戦を有利に戦うことができます。

 12年米大統領選挙でオバマ陣営はボランティアの草の根運動員を使って戸別訪問を行い、08年に作成した有権者名簿に新らしい情報を加えて修正し、最新の名簿を作りました。

 当時、研究の一環でオバマ陣営に入っていた筆者は、同陣営の指示でこの作業を行いました。具体的に述べますと、戸別訪問を通じて他州から南部バージニア州フェアファックスに移動してきた有権者の情報を名簿に加えました。それらの情報には、どの争点に関心が高いかなどが含まれていました。

 ちなみに、16年米大統領選挙でクリントン陣営はオバマ陣営から有権者名簿を購入しました。クリントン陣営はその名簿を戸別訪問を行ってアップデートしました。それほど、地上戦を戦ううえで、最新の有権者名簿が不可欠である訳です。

 ブティジェッジ陣営は1から名簿作成の作業をしていかなければなりません。ただし、選挙戦における「勢い」では同陣営がサンダース陣営をやや上回っているかもしれません。

 米ボストン・グローブ紙及びサフォーク大学(東部マサチューセッツ州)による共同世論調査(20年2月4-5日実施)ではサンダース氏とブティジェッジ氏の差は6ポイントありました。エマーソン大学(東部マサチューセッツ州)の世論調査(20年2月3-5日実施)ではサンダース氏は10ポイントもブディジェッジ前市長を引き離していました。ブティジェッジ候補はその差を最終的に1.3ポイントまで縮めました。

 従って、地上戦のデータが豊富なサンダース陣営対「勢い」のブティジェッジ陣営とみることができいます。

乗り越えなければならない共通の「壁」

 サンダース・ブティジェッジ両候補には乗り越えなければならない共通の「壁」が存在します。両候補とも中西部アイオワ州やニューハンプシャー州のような白人が支配している州では強さを発揮するのですが、ヒスパニック系(中南米系)及びアフリカ系といった文化的多様性に富んだ州では苦戦を強いられています。

 22日に党員集会が開かれる西部ネバダ州では民主党支持者の22%がヒスパニック系です。一方、29日に予備選挙が開催される南部サウスカロライナ州においては民主党支持者の61%がアフリカ系です。

 16年民主党予備選挙においてサンダース上院議員は、クリントン元国務長官に対してネバダ州で6ポイント差で敗れ善戦をしたものの、サウスカロライナ州では47ポイント差の大敗を喫しました。

 サンダース・ブティジェッジ両候補は自分がドナルド・トランプ大統領を破る候補であると語気を強めて語っていますが、ヒスパニック系及びアフリカ系の票を獲得できなければ勝機がないことは明白です。

 第3戦のネバダ州及び第4戦のサウスカロライナ州でサンダース・ブティジェッジ両候補がバイデン前副大統領から、ヒスパニック系とアフリカ系の票を奪えるのかに注目です。そして、バイデン氏に対して両候補が何ポイント差まで迫ることができるのかが、見どころになります。

 サンダース上院議員はネバダ州で、ヒスパニック系のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員(民主党・東部ニューヨーク州第14選挙区選出)を前面に出して、同系の獲得に乗り出すでしょう。サンダース氏とオカシオ・コルテス下院議員の関係は、メンター(助言者)とプロテジェ(助言を受ける人)です。

 地元の有力紙ラスベガス・レビュージャーナルが行った世論調査(20年2月11-13日実施)によれば、サンダース上院議員がバイデン前副大統領を7ポイントリードしています。仮に、ネバダ州ないしサウスカロライナ州でサンダース候補が勝利すると、米メディアは民主党候補の本命として同候補を扱う可能性が出てきます。一方で、メディアは「バイデン撤退論」を議論するでしょう。


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