海野素央の Love Trumps Hate

2020年4月10日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

性悪説VS.性善説

 安倍首相は7日の記者会見で、「緊急事態宣言は都市封鎖を行うことではない」と繰り返し述べました。「経済サービスは維持する」と言うのです。ただ、強制力のない中途半端な緊急事態宣言によって、わずか1カ月間で本当に感染を防ぐことができるのでしょうか。

 以前述べましたが、ロックダウン(都市封鎖)中のイギリスでは、感染が確認されたボリス・ジョンソン首相が徹底した「外出禁止令」を出し、「警察官が違反者を取り締まり罰金を科す」と語気を強めました。ジョンソン氏は強制力によるルールの厳守により、重症者数を抑えて医療崩壊阻止を図ろうとしています。

 同様に、ロックダウンが続くドイツは州境に検問所を設置し、居住州以外の州への移動を禁止して、厳しいコロナ封じ込めを実施しています。

 一方、安倍首相は都市から地方へ移動をしないように注意を呼びかけ、一人ひとりが責任の自覚ある行動をとるように促しました。要するに、日本の強制力のない緊急事態宣言及び都市封鎖の否定は「性善説」に基づいたものです。これに対して、罰則並びに罰金による強制力を柱にした欧州の政策の根底には「性悪説」があるといえます。

行動変容の仕方

 行動変容に関するアプローチの仕方も日本と欧州の政治指導者で異なります。例えば、緊急事態宣言の中で、安倍首相は「人と人との接触する機会を最低7割、極力8割減らせば、2週後に効果が出る」と主張し、行動変容を求めました。加えて、3密(密閉・密集・密接)に注意をするように促しました。「数値目標」と「スローガン」を用いた行動変容の仕方です。

 これに対し、ジョンソン首相、アンゲラ・メルケル独首相及びトランプ大統領は「死」を持ち出し、「恐怖心」によって国民の行動を変えようとしています。

 例えば、ジョンソン氏は「医療崩壊は死者数を増加させる」というメッセージを発信しています。メルケル氏は国民向けのテレビ演説で、「次のことを真剣に受け止めてください。復活祭(今年は4月12日)の国内旅行を止めてください(省略)。生死にかかわる重要なことです」と述べ、外出が「死」と直結するという強い警告のメッセージを発信しました。

 一方、トランプ大統領は連日行われる記者会見で常に死者数に言及しています。思えば2016年米大統領選挙において、トランプ氏はメキシコからの不法移民がサンフランシスコで白人女性を殺害した事件について繰り返し有権者に語り、恐怖心を煽って投票行動が自分に有利になるように変えました。恐怖心は行動変容をもたらす有効な手段です。

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