再エネ大国ドイツで伸びる洋上風力
2019年ドイツでは再生可能エネルギーによる発電量のシェアが46%に達した。風力発電量が24.4%、太陽光発電量が9.0%などだ。この再エネの発電量は今年になりさらに伸びている。その理由の一つは、洋上風力設備量の拡大だ。ドイツでは、陸上風力設備への風当たりが強くなっている。昨年、連邦政府は住宅から1km以上離れた場所にしか風力発電設備の建設を認めない方針を打ち出したが、風力発電設備の建設を計画しているいくつかの地方政府から反発を受けた。
だが、陸上風力発電設備の建設は徐々に難しくなっている。理由の一つは許可手続きが複雑になっていることだ。さらに地域住民から建設阻止の訴訟も増えている。このため、既に5000万kWの能力を持つ陸上風力発電設備は昨年90万kWが新設されただけだった。伸び悩む陸上風力発電設備の新設量を上回ったのは洋上風力だ。陸上との比較では風量に恵まれている洋上風力の建設が北海を中心に増え、110万kWの設備が建設された。
独連邦政府は、2020年洋上風力設備650万kWの目標を持っていたが、既に昨年末の北海の設備能力だけで644万kWに達し、今年1月北海の送電能力は713万kWに達した。昨年の発電量は北海設備が202億kWh、バルト海設備が40億kWh、合わせると洋上風力発電設備からの発電量は全発電量の約5%のシェアを占めている。
しかし、洋上風力など再エネ発電量の伸びは電力需給に問題を生じ、電気料金上昇を引き起こすことになった。電力需要低迷により問題は拡大しそうだ。
不足する送電能力
ドイツ産業の基盤である自動車産業を中心に製造業の多くが位置する南部では大きな電力需要があるが、発電設備が不足している。2022年には南部の原発が閉鎖されることから、南部はさらに電力供給の問題に直面することになる。このため、最近拡大している北部の洋上風力発電設備の余剰電力を南部に送電すべく送電線の建設が行われているが、土地所有者の反対が強く、一部地下に埋設する必要があり、工事が進んでいない。予定される総延長7000kmのうち、認可が下りたのが1800km、工事が終了したのが1100kmだ。
送電能力が不足するため、電気料金に影響を与える事象がしばしば発生する。電気は供給量と需要量が一致しなければ停電するが、発電量が需要量を超える事態が発生するようになっている。停電を防ぐためには発電量を制御し、削減する必要がある。日本でも太陽光発電量が増えた九州電力管内で発生する出力制御だ。ドイツでも以前から出力制御が行われいるが、洋上風力発電設備の増加により制御量が増加している。たとえば、昨年第1四半期、風力からの発電量32億kWhが制御されている。風力発電量の約8%に相当する量だ。
この出力制御に伴い事業者には補填が行われるが、その費用は電気料金として需要家が負担することになる。発電が不安定な再エネの送電安定化にも費用が必要だが、連邦ネットワーク庁によると2019年第1四半期から第3四半期まで安定化に9億5000万ユーロの費用がかかっている。だが、需要家が負担する費用はこれだけではない。