2022年11月30日(水)

WEDGE REPORT

2020年4月15日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

電力需要低迷が引き起こすマイナスの卸価格と電気料金上昇

 ドイツでは卸市場で電力が取引されている。卸市場では需要量と供給量が合ったところで発電量と卸価格が決まる。電力需要が低迷した際には、どうしても電力を販売したい発電事業者は、マイナスの価格で入札をすることがある。お金を付けて電気を引き取ってもらうわけだ。例えば、ボイラーの火を一度落とすと立ち上げに大きな費用が発生する火力発電事業者は立ち上げ費用よりも安ければマイナス価格で入札する。また、再エネ事業者は固定価格買取制度の中で補填される(制度変更後事業を開始した事業者はマイナス価格が6時間を超えない限り補填される)ので損はない。

 電力需要が低迷した時に生じるマイナス価格だが、コロナウイルスの影響で需要低迷が長引くとマイナス価格の発生が増えるものと予想されている。この状態に懸念を表明したのが独商工会議所だ。卸価格の下落により再エネ事業者に対する固定価格買取制度からの負担が17億ユーロ増加することが予想され、結果、固定価格買取制度の今年の負担金、1kWh当たり6.75ユーロセントが来年7%引き上げられることになると試算している。この値上がり分を新型コロナの影響を受ける事業者に回さず国が負担することを商工会議所は要求している。

 さらに、来年から導入予定の運輸部門と住宅(ビル)部門から排出される二酸化炭素にトン当たり25ユーロ課税する制度の導入を2年間延期することも商工会議所は要求している。この税収は固定価格買取制度の補填、消費者の負担軽減に利用される予定だったので、要求が通れば、消費者の負担は軽減されないままになる。

 

 欧州主要国の昨年の家庭用電気料金は図の通り。再エネ発電比率が高いドイツは世界一だ。コロナウイルスにより電力需要が落ち込む中で、供給の柔軟性に欠ける再エネからの大きな発電量を抱えるドイツは電気料金上昇を避けるのは難しい。蓄電池の価格が大きく下落する、あるいは水素の形に変え貯蔵することが経済性を持つまで、再エネ導入に際しては安定化手段も常に考える必要がある。

  
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