Washington Files

2020年4月23日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

バイデン氏は誰を副大統領に選ぶのか?写真はウォーレン氏(REUTERS/AFLO)

 ジョー・バイデン民主党大統領候補が選ぶ女性パートナーは誰か? 米主要メディアの間では今、11月大統領選での副大統領候補をめぐり、過去に例を見ないほどの関心が集まっている。そのわけは―。

 これまでの米大統領選を振り返ると、現職大統領に挑戦する野党の指名候補が副大統領候補を選ぶのは、夏の党大会直前がほとんどだった。しかし、すでに正式指名が事実上確定したバイデン氏の場合、国民の関心は早々と「ナンバー・ツーは誰か?」に集まりつつあり、近く発表の観測も流れている。

 注目される背景として、主に3つの理由がある。

 第一は、バイデン氏は77歳(大統領就任時には78歳)と、これまでの大統領候補としては最高齢であり、もし当選し、執務を開始したとしても、1期のみで自ら退任の可能性が高いとみられているからだ。

 しかも、健康上の不安(心臓病)も皆無ではないだけに、任期途中で副大統領にバトンタッチという、予期せぬ事態も皆無ではない。

 民主党首脳部の間ではこうした点を十分考慮に入れ、副大統領候補選定の基準として、万が一に備え、「ただちに世界最強の国家を率いるだけの器量、才覚、人望の持ち主」を

 最優先すべきだとする意見が支配的だ。

 バイデン氏側近たちによると、本人もこの点をすでに十分理解しており、身辺に何が起こっても安心して権限移譲ができる人物を念頭に、慎重に人選に着手しているという。

 近代米国政治史上、大統領候補が最初から「任期1期のみ」の可能性を前提に副大統領候補の人選に当たったケースは皆無に近い。過去、1期あるいは2期を副大統領のまま終わるケースがほとんどだっただけに、副大統領の存在は目立たず、内外政策上の大統領執務に及ぼす影響力も限定された。

 その影の薄さは、ホワイトハウス内オフィス配置図にも示されている。より厳密にいえば、副大統領の側近たちが日常仕事をするオフィスはホワイトハウス本館ではなく、西側に隣接する「アイゼンハワー・エクゼキュクティブ・オフィスビル(EEOB)」内に置かれており、正副大統領のスタッフ・ミーティングの際には、副大統領の側近たちはその都度、地下道を歩いて大統領執務室(オーバル・オフィス)や機密度の高い「シチュエーション・ルーム」に出向くことになる。

 歩行距離にして100メートル近く離れている。筆者がワシントン特派員時代は、このビルは「オールド・エクゼキュティブ・オフィスビル(OEB)」として知られていた。そしてこの地理的距離のゆえに、大統領の打ち出す重要政策が緊急性の高い場合、副大統領およびその側近との事前協議なしに発表されることも珍しくない。

 トランプ政権下のペンス副大統領の置かれた立場も同様だ。ペンス氏はコロナウイルス危機以来、関連省庁スタッフを統括する「特別タスクフォース議長」を務めているが、

 連日、全米向けに行われる「定例ブリーフィング」を取り仕切るのは大統領であり、緊急措置なども含め、ペンス氏が主導権を発揮する場面は極めて限られている。

 しかし、今回だけは例外だ。民主党政権が発足した場合、副大統領および側近たちの権限と存在はかつてなく大きなものになると予想される。それだけに、最終的に誰に「副大統領候補」の白羽の矢が当たるか、の関心も高い。

 第二に、バイデン氏はこれまでの予備選を通じ、すでに副大統領候補を女性とすることを公言、公約している点だ。

 従って、万が一、「バイデン大統領」が健康上の理由で任期途中で辞任表明することになった場合、米国史上初の「女性大統領」が誕生することになる。

 2016年大統領選では、ヒラリー・クリントン候補が最後まで善戦し、一時は歴史的女性大統領選出への期待も高まった。接戦で敗退したものの、その後も、他の先進国並みに米国でも女性大統領の登場を望む声が後を絶たない。

 そして今回、バイデン候補が当選すれば、「女性副大統領」が正式に実現、その後、大統領としての政権継承も現実味を帯びてくることになる。

 第三に、バイデン氏は女性副大統領候補とのコンビを組むことで、全米女性有権者の多くの支持を取り付け、11月本選におけるトランプ氏との戦いをかなり有利に進められるとの読みがある。

 実際、これまでの各種世論調査によると、トランプ氏の場合、全体の過半数を占める女性有権者を対象とした支持率は40%前後にとどまり、「不支持」が大きく上回っている。とくにコロナウイルス危機によって、女性が強い関心を抱く公衆衛生、育児、医療制度の不備が露呈して以来、トランプ政権に対する不満がかなり高まっており、今後“女性の反乱”に発展する可能性も指摘されている。

 では、こうした背景を踏まえ、最終的に副大統領候補に選ばれるのは誰か?

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