農協組織そのものが農産物の販売や資材扱い部門では成り立たず、金融や保険で運営されている。他の先進国と比べて数も多い日本の農業関係機関や職員の、農業への寄与度はどれほどのものなのか。
先述したとおり、カリフォルニア州の10年の農業生産額は375億ドル。これに対して日本は914億ドルで、確かに日本の方が生産額は大きい。ただし、それは農産物価格の高さも反映している。それ以上に、同州の農業のバックヤードにはたった1つの大学の3つの分校が普及機関をかねて存在するだけ。それに対して、日本には31万5千人におよぶ農業関係者がいるのだ。そんな多数の農業関係者を抱えながら、日本の農業生産額はカリフォルニア州1つの州の3倍にも満たない。
現代のわが国において、すでに「農家」と分類される世帯の大多数は農業に経済的には依存していない。その中で、貿易自由化の問題をはじめ“農業問題”を声高に叫ぶのはむしろ“農業関係者”たちなのである。農業・農村・農民の困難や貧しさを語り続けることによってこそ、自らの居場所を確保しているのである。
才覚備えた農業経営者たち
もう好い加減にしよう。誇りと経営才覚を持って農業に取り組む農業経営者たちは十分に育っている。それどころか、農業関係者が“農業問題”と語る事象の中にこそビジネスチャンスを見出している者も少なくない。
筆者は「A-1グランプリ」という農業・農村を核としたビジネスプランコンテストを開催している。第3回目になる今年の決勝大会は、12月1日、2日に経済産業省と農林水産省の主催で東京ビッグサイトにおいて開催される「農業フロンティア2012」で行う予定だ。
目的は優れたビジネスプランを表彰し世間に知らしめることだけではない。応募者に各業界の人々との出会いの場(相談会)を提供し、プランのブラッシュアップだけでなく、マッチングの場にしようというものである。