ソーシャルディスタンスを意図的に作り出す
欧米などが行うロックダウン(都市封鎖)の効果については、「武漢が分かりやすい例ですが、効果だけをみれば有効なのは間違いありません。ただ、極端すぎます。経済を回すというのもやはり大事で、このバランスをどう取るのかが一番難しいです。私の経験から言えば、最初だけは公衆衛生を第1に考えるべきです。感染者が増えるともっと大きな問題に直面するからです。感染拡大対策を実施した後、すぐに経済対策も加味するのがいいでしょう」と語る。
日本が感染拡大防止と経済を同時に回すことを最初から行った結果、緊急事態宣言を発令し、延長する事になったことを考えると、初動の入り方を間違えたと言えそうだ。
前回、「日本と同じ緩いロックダウンでコロナ感染抑える香港」でも書いたが、香港はロックダウンをせず、外出も認めている。一方、レストランは総座席数の50%しか利用させないなどの制限付きの営業活動を認め、経済にも配慮しつつ感染爆発を防いだ。市民一人ひとりにソーシャルディスタンスを呼び掛けるだけではなく、意図的に作り出した。
結果、在宅勤務だった公務員は5月4日から元の働き方に戻り、5月27日から学校が学年ごとに順次再開する事が決まり、映画館など一時休業を求められていた業種も5月8日から防疫措置を取れば再開が認められるなど、出口戦略が本格化したことでもわかる。
プライバシーと情報公開のバランスについても「これも非常に敏感な問題ですが、感染拡大防止の論点から情報をどう扱うのかということを、少なくとも明確に人々に示す必要はありますね」と語る。
ワクチンが開発される前と後の対策
感染拡大と言う意味では税関のコントロールという水際対策も重要だ。「入境禁止や、入境を認めるものの強制隔離を行うなど、いくつかの方策があります。グローバリズムが拡大した以上、香港人が外国で感染者して持ち込む形は避けられません。もし外国人の入境を緩和すると第3波、第4波が来るリスクが出てきます。香港内での各種規制の緩和はできても、税関の緩和は容易ではないです」。観光業界は今後も厳しい局面が続くということが想定される。
「ワクチンができるまで1、2年かかると思いますが、その間は、規制を緩め、感染拡大基調なら再び厳しくして、また緩める、を繰り返す必要があると考えています。ワクチンができた後は、インフルエンザのような存在になるでしょう。COVID-19の感染パターンやウイルスが変異するという特性を考えると、根絶というのは難しく、共存をする事を考えた方が得策です」