2024年11月22日(金)

Washington Files

2020年5月11日

バイデンの警告

 こうした中で大きな話題となったのが、バイデン候補が去る4月23日、インターネットによる有力支援者向けのバーチャル集会で発した次のような“警告”だった:

 「私の言うことを肝に銘じておいてもらいたい。トランプはなんとかして選挙先延ばしを考え、なぜ予定通りの実施が困難かについての何らかの理屈を編み出してくるだろう」

 CNNテレビによると、これまでにも予備選段階で同様に「大統領選延期」への懸念が多くの支持者たちから各民主党候補に対し寄せられていたが、同党最終候補指名をほぼ確実にしたベテランのバイデン氏自身がその可能性に言及したのは異例だという。

 ただ実際には、大統領選投票日については、連邦法で「4年ごとの11月第1月曜の次の火曜日」(今年は11月3日)と明記されており、大統領の独断で実施日を変更することは不可能だ。もし、強引に投票日を変更する場合は、上下両院による法改正が必要となるが、下院は民主党が多数支配しているため、法改正案成立の見込みはない。

 さらに、コロナウイルス危機という未曽有の国難を理由に大統領が「国家非常事態」を宣言、仮に多くの有権者が投票できず、国民の声が十分反映されていないとの理由で選挙結果自体を却下したとしても、合衆国憲法規定により「現職大統領は翌年1月20日をもって退任する」ことが義務付けられており、それ以降、トランプ氏がホワイトハウスにとどまり続けることはできない。もちろん、憲法改正には何年もかけた国民論議も必要となり、現実的とは言えない。

 しかし、共和党としては、11月投票日の直前に各州レベルで、投票実施日延期や投票所投票以外を認めない措置を講じるなどの戦術に出る可能性は否定できない。げんにコロナ危機最中の去る4月15日実施されたウイスコンシン州予備選では、民主党知事が、外出規制のままの投票所投票には無理があるとして投票日延期方針を事前に発表したが、共和党が制する州最高裁がこれを却下、混乱状況を引き起こす結果となった。

 同様に大統領選においても共和党は、投票所でのスムーズな投票に支障が生じかねない何らかの術策を講じる事態も否定できない。

 ただ、実際にこうした「奇策」が大統領選挙当日に、共和党にとってどれだけ有利な結果を導き出せるか、その効果は未知数だ。

 それでも、民主党選挙プロの間では最低でも、共和党があらゆる手段を講じ、今年の大統領選の「異常事態」を国民の前で演出することにより、有権者の投票意欲にある程度水をさす効果を狙うことも否定はできないとして、さらなる警戒を強めている。

 いずれにせよ、こうした尋常ならざる話題が広がること自体、コロナウイルス危機収束の見通しも依然立たないまま、トランプ陣営が刻々と近づく大統領選に焦りの色を深めつつあることの証左とも言えよう。

  
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