怒りの火はどこに向くのか?
議論がどう転がっていくか、すべてはその場の文脈、流れ次第だろう。その時の世論の空気次第であり、何か決定的な新事実などが出てくるかどうか、などによっても変わってくるだろう。
仮にトランプ政権の対応の検証が主テーマとなれば、トランプ大統領とて無傷では済まされないだろう。なぜなら、米国民は感情のはけ口を求めているとも言えるからだ。
過小評価していはいけないのは、新型コロナ禍で人々が受けているストレス、不安、経済的損害。そしてそれらがもたらす怒りだ。コロナ問題で無傷であった人は誰一人いない。すべての人々が何らかの苦しみ、痛み、ストレスにさらされている。そうした怒りの火は、敵に向かえば、あっという間に敵を焼き尽くし、逆にこちらに吹けば、我を焼き尽くすだろう。
果たして怒りの火はどちらに吹くのか。すべてを決めるのはその時の世論の風向きだ。アゲインストの風に乗せられて、コロナの怒りという火がトランプ大統領を包み、11月の本選で敗れることがあれば、そこでの最大の勝利者はバイデンでも民主党でもなく、中国だろう。中国との対決を決意した初の大統領が消えてくれることは、中国にとっては最上の戦略的勝利以外のなにものでもない。
世界がコロナに苦しむ中、その間隙をつく形で南シナ海での自己利益の拡張を続けた中国。そんな中国が新型コロナの発生源となりながら、新型コロナによってトランプの退場という戦略的成果を得る、これほど皮肉な展開があるだろうか。
そうすると一見、損益計算が理解しがたい中国が仕掛けた情報戦も、実は米有権者を混乱、分断させることで、トランプ大統領を追い落とすためだった、そう読み解けば案外、腑に落ちてくるかもしれない。
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