海野素央の Love Trumps Hate

2020年5月29日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

主要な争点

 第3に争点の変化です。16年の選挙戦ではトランプ大統領は「メキシコからの不法移民はレイピスト(強姦者)だ」と過激な発言を繰り返して、「メキシコ叩き」に時間を費やしました。その結果、トランプ氏は米国とメキシコとの「国境の壁」建設を主要な争点にすることに成功しました。

 20年の選挙戦では、米国民の移民問題に対する関心は16年ほど高くはありません。そこでトランプ大統領はメキシコに代って、コロナ発生源の中国を標的にして「中国叩き」にエネルギーを注いでいます。

 トランプ氏は自身のツイッターで新型コロナウイルスを「中国ウイルス」とつぶやき、ウイルス感染拡大を「中国による殺戮(carnage)」と呼び、「すべてトップの指示だ」と投稿しました。もちろんトップとは習近平国家主席です。

鍵を握る高齢者の票

 第4に65歳以上の高齢者です。この年齢層はトランプ大統領とバイデン前副大統領の支持層です。しかも、若者層と比較して投票に出向く割合が高いという特徴があります。

 16年の大統領選挙では、65歳以上の高齢者においてトランプ大統領が52%、クリントン元国務長官が45%を獲得しました。ところが今、高齢者層に異変が起きています。「トランプ離れ」です。

 退職した高齢者が多く移住している激戦州の南部フロリダ州では、新型コロナにより2200人以上の感染者が死亡しています。うち83%が65歳以上の高齢者です。高齢者の間にトランプ大統領のコロナ対応に不満の声が上がっており、それが数字に現れています。

 例えば、クイニピアック大学が4月22日に発表したフロリダ州を対象にした世論調査によれば、同州の65歳以上の有権者における支持率はバイデン前副大統領が52%、トランプ大統領が42%で、同前副大統領が10ポイントリードしました。

 全州を対象に行った同大学の調査(20年5月14-18日実施)でも、65歳以上の高齢者においてバイデン氏がトランプ氏を10ポイント上回りました。コロナ感染のこの年齢層に対する影響は看過できません。

 仮にバイデン氏がフロリダ州で高齢者の票をトランプ大統領から奪い、中西部ミシガン州とウィスコンシン州並びに東部ペンシルべニア州でバーニー・サンダース上院議員(無所属・東部バーモント州)を支持する若者を投票所に動員できれば、勝機が見えてくるかもしれません。

 さて、トランプ大統領はバイデン前副大統領を「寝ぼけたジョー」とレッテルを貼って揶揄しています。トランプ氏には「よろめている老人」「頭の切れが悪い老人」というイメージを有権者に植え付ける思惑があります。

 トランプ氏はバイデン前副大統領が多数の州で同時に党員集会・予備選挙を火曜日に開催する「スーパー・チューズデー」を「スーパー・サーズデー(木曜日)」と呼んだと述べて、同前副大統領を小馬鹿にしました。

 加えて、南部ジョージア州はスーパー・チューズデーに含まれていないのですが、トランプ氏はバイデン氏が同州を入れたと指摘し、「頭が混乱している」というメッセージを発信しました。ただ、バイデン氏の老化現象を大きく見せて攻撃を加えるトランプ氏の選挙戦略に不快感を示す高齢者も少なくないでしょう。

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