2024年11月23日(土)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年5月29日

「リンカーン・プロジェクト」

 第5に「リンカーン・プロジェクト」です。『ついに身内から、しかも得意技で“攻撃”を受け始めたトランプ』で紹介しましたが、リンカーン・プロジェクトはトランプ大統領とトランプ主義を選挙で打ち負かすために、故ジョン・マケイン上院議員やジョン・ケーシック元オハイオ州知事(共に共和党)の元選挙参謀らが立ち上げたプロジェクトです。

 リンカーン・プロジェクトはネットビデオの中で、バイデン前副大統領を国家を再び統一する「超党派のリーダー」として描いています。

 さらに、「2つの米国」と題するビデオでは、新型コロナの世界的大流行の中で、米国人の命を救うために最前線で戦う医療従事者と、ロックダウン(都市封鎖)に反対する抗議活動家を鮮明に対比しています。このビデオは前者は自己を犠牲にして他者のために、後者は自分だけのために戦っていると訴えています。

 そのうえで、「我々はトランプがどちらの側の米国人か、すでに分かっている。あなたはどちらの側か」と問いかけて締めくくっています。

 リンカーン・プロジェクトのネットビデオには、トランプ陣営の選対本部長ブラッド・パースケール氏の裕福な生活を暴露するものがあります。パスケール氏はフロリダ州にある240万ドル(約2億5800万円)の豪邸に住み、100万ドル(約1億790万円)のマンションを2つ所有しているというのです。しかも、ヨットとフェラーリに乗っていると暴いています。

 4年前の本選では、共和党内にトランプ氏及び同陣営の選対本部長をこれほどまで激しく批判し、クリントン氏を応援するプロジェクトは存在しませんでした。前回の選挙で民主党支持者でありながらトランプ大統領に投票をした「隠れトランプ」に対して、今回の選挙では共和党支持者でバイデン氏に票を投じる「隠れバイデン」の芽が確実に出てきています。リンカーン・プロジェクトは、その芽を大きく成長させる可能性を秘めています。

 以上、5つの相違点を挙げました。その中で、新型コロナの影響を受けた失業率の高さ及び、高齢者の支持率はバイデン前副大統領に有利に働いています。好感度においても、バイデン氏はトランプ大統領をリードしています。加えて、リンカーン・プロジェクトの援護射撃も受けています。

 従って、トランプ大統領はこれらの不利な状況を打開するために、「中国叩き」に一層力を注ぐでしょう。

  
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