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2020年6月13日

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ニューヨーク・ユニオンスクエアに描かれた抗議の書き込み(AP/AFLO)

 5月30日から始まった、ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイド氏の警察官による殺害事件への抗議デモは、米国では10日以上継続し、欧州をはじめとする世界中にも飛び火した。警察の解体を訴える声、さらに「沈黙は人種差別への協調だ」と抗議行動に参加しない人を批判する声まで上がっている。

 しかし、本来米国は言論の自由を何よりも大切にし、銃規制を行わないのは「住民には自らの財産、生命を守る権利がある」ため、とされてきた。今回の抗議行動では、そうした米国の自由主義が建前だったのか、と思わされる事態も起きている。

 最も顕著な例は、保守派のコメンテーター、キャンディス・オーウェンズ氏に対する全国的なバッシングだ。オーウェンズ氏は元々は反トランプだったが、その後トランプ支持者となり、「Black Lives Matter」(黒人の命は大切だ、今回のデモのスローガンとなっている言葉でもある)運動に懐疑的な見方を示していた。しかし、オーウェンズ氏は黒人である。

 ジョージ・フロイド氏の事件が起こる前に、米国ではもう一つの黒人が白人によって殺害される事件が起きていた。2月に起きたアーマード・アーベリー氏殺害事件だ。この一件は「ジョギング中の武器を持たない黒人男性が、武器を持った2人の白人に追いかけられて射殺された」というもので、今回の抗議デモの火種とも呼べる事件だった。2人の白人はその後逮捕されている。

 しかし、オーウェンズ氏は「アーベリー氏を無実のジョガーだという、でたらめな解説はやめるべき。彼は建築中の建物に無断で押し入ったことが防犯カメラの映像から明らかになっている」とし、この一件は人種差別となんら関わりがない、とツイッターで主張した。つまり、他人の建造物に入り込んだ不審者を通りがかった人が問い詰め、それが発砲事件に発展した、という。米国ではありふれた事件でもある。

 さらにオーウェンズ氏は5月9日付のツイッターで「毎年黒人は白人に殺される数の倍以上白人を殺している。我々(黒人)は全米の暴力犯罪の85%を占め、すべての殺人事件の50%が黒人によるものだ。事件に巻き込まれて殺害される黒人の90%以上は黒人によって殺害されている。にもかかわらず、我々は(黒人が白人に殺される度に)それを人種差別だと訴えているのだ」と主張した。

 その舌鋒は当然フロイド氏の事件にも言及、ラジオインタビューで「フロイドは黒人の悪しきカルチャーの象徴のような人物。彼が殉教者のように扱われることはあり得ない」などと語り、その一部はトランプ大統領のツイートにも利用された。フロイド氏を悪しきカルチャー、と呼んだのは、彼が過去に強盗などで長期の服役を余儀なくされており、今回の事件のきっかけとなったのも偽札を使用した疑いがあったためだ。

 ツイッターはこうしたオーウェンズ氏の一連の発言に対し「人種差別を助長する」と発言を削除したり、アカウントを凍結するなどの対応を見せた。また共和党内からでさえ「オーウェンズ氏の意見は受け入れがたいものだ」という声も聞かれる。つまり、国中がオーウェンズ発言をなかったこと、聞かなかったことにしよう、というモードになっている。

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