Wedge REPORT

2020年6月26日

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(DisobeyArt/gettyimages)

 カリスマエンジニア中島聡氏が率いるNPO一般社団法人シンギュラリティ・ソサエティが個人経営の飲食店でも手軽に導入できるテイクアウト支援サービスを開発。初期費用、サービス利用料、販売手数料無料で提供開始。レストランビジネスの支援に乗り出す。

おもちかえり.com(https://omochikaeri.com/)※Internet Exploreのみ非対応

おもちかえり.com

コロナ渦で窮地に立ったレストランを救え!

 世界的ソフトウェアエンジニアの中島聡氏が、飲食店向けのテイクアウト支援サービスをNPOを使って開発。その日本版である「おもちかえり.com」が6月24日にリリースされた。米シアトル在住の中島氏はなぜ、このタイミングでシステム開発を決意したのだろうか。

 「新型コロナウイルス対策で、突然、色々な店がシャットダウンになりました。私の息子もレストランのオーナーシェフで非常に困っていました。政府からの通達でレストランは全部閉店、やっていいのはのテイクアウトだけ、ということになりました」

 「そこで彼はテイクアウトをやろうとして調査しましたが、ウーバーイーツ(UberEats)とかグラブハブ(GrabHubはシカゴに拠点を置くフードデリバリー企業)に頼むと大体15〜30%ぐらい手数料取られてしまうため、それは使えないという結論に達しました。他のサービスも基本的には、まず集めたお金が業者に入って、そこから手数料が引かれてレストランに入るというビジネスモデルであることが分かりました」

 中島氏はレストランと配送業者をまとめサービスを提供する仕組みに疑問を感じて、別のアプローチを模索する。

 「僕はもっと別のレストランに直接お金が入る仕組みがあってもいいかなと思って、『Own Plate』(レストランのオーナーが自らの手で簡単にメニューページを作って、注文、決済まですることができるサービス)のソフトウェアを作り始めたんですよね。作り始めたという言い方も変ですが、これは作らなきゃいけないなと思って、何人かに声をかけて作り始めたのがきっかけです。3月中旬ぐらいです」

ソフトウェアエンジニアの中島聡氏は、マイクロソフト社でWindows95を完成。2019年に米国で創立した会社「Xevo」を3億2000万ドル(約352億円)で売却、CEOを退いた。NPOシンギュラリティ・ソサエティ代表理事(写真、Naonori Kohira)  

最初はソフトウェアだけの予定が最終的にはサービス提供に発展した 

 できる限り低コストでのサービス提供を目指して、NPOによるシステム開発とサービス提供に到達した中島氏。最初はオープンソースのソフトウェア提供だけを考えていたというのだが、なぜサービス提供に至ったのだろうか。

 「まずはNPOでやって、この手のサービス、実はユーザーが増えない限りほとんどコストがかからないんです。ものすごく安いので、まずは無償で提供して、まあ本当にそれは息子だけでもよかったくらいだし、10件でも100件でもいいけど、そういう規模で人が使ってくれる分には、お金もかからないから、何の問題もありません」

 開発に携わったNPOシンギュラリティ・ソサエティとはどんな組織なのだろうか。その名称からはレストランと関連があるとは思えないのだが。

 「シンギュラリティ・ソサエティは、私が2年弱前に立ち上げたNPOです。メンバーとオンラインサロンを続けていました。そこで世の中の役に立つサービスとかアプリを作って、あわよくばビジネスにしようという実験、または、勉強会のようなことをやっていました。このプロジェクトはそれに該当するかなと思ったのです」

 「そのソフトウェアビジネスの立ち上げ方としても、私としてはちょっと実験的なんですよ。こういうサービスは、どちらかと言えば会社を作ってお金を集めて、バーンとローンチして、実はそこでも固定費が出ているので、うまくいかないと首が回らなくなって、結局、利益計上のために受注するみたいな、そういうドツボにはまっている会社を多く見てきました。そこで、まずサービスを立ち上げてうまくいってから事業化がする方が正しいかなと思っています」

 「基本的にはNPOでやってると固定費はゼロなわけですよ。基本的にみんなボランティアで働いていて人件費がないですからね。サーバー代も本当にものすごく小さな出費です。ですから、ウーバーイーツとかグラブハブとか、日本にもいくつか出てきましたが、そういう所って、みんなものすごい体力勝負でやるしかないんです。こういうものを立ち上げたら固定で人件費もかかるし広告費もかかるので、とにかく売り上げを伸ばさないと困ります。どうするかと言えば、ウーバーイーツを見ても分かりますけど最初は赤字で突っ走るしかないんですよ。体力勝負で赤字のまま突っ走って、最後まで資金切れせずに勝ち残ったところが全部とるみたいなビジネスモデルの世界です」

 「そこに真っ向から行くのは明らかに賢くないわけですよね。逆にNPOで入れば体力勝負って言っても、こちらには固定費がないためいつまでも戦えるわけです。そう考えると実は面白いんじゃないかなと思いました。あえてこの戦いにNPOとして臨むのはちょっとした社会実験的な部分もあります」

日本では伊藤忠商事が「おもちかえり.com」に賛同した

 6月24日の「おもちかえり.com」のプレスリリースは伊藤忠商事のWebサイトから発信された。非営利団体のシンギュラリティ・ソサエティと伊藤忠商事はどのような協力関係になっているのだろうか。

 「伊藤忠は総合商社ですから、将来的にはビジネスチャンスありと思っていただきましたが、まずはボランティアベースでいいそうです。レストランをサポートするということには、すごく意義を見出していただいています。もちろん、食材をレストランに卸すビジネスもされているので、レストランとの繋がりもあります。まず、私たちと一緒にNPOでレストランをサポートするという形で、このサービスを広めつつ、その中で例えば取引先であるスーパーマーケットチェーン等、商品の持ち帰り需要がある分野での提携も、これから模索していく段階です」

ローカライズは比較的簡単で多言語にも対応

  「OwnPlate」として開発されたテイクアウト支援サービスの日本語版である「おもちかえり.com」は、ほぼタイムラグ無しで完成したという。日本語版のローカライズも担当したNPOシンギュラリティソサイエティ理事でソフトウェアエンジニアの有本勇氏は、こう語った。

 「もともとローカライズを前提に作っていたソフトウェアなので、後は細かい通貨の問題や日本特有の税金の問題などを処理するだけで完成しました。全体の作業から見ればローカライズは10%未満の作業だったと思います。例えばドイツ語の言語セットを用意すれば、すぐにドイツ語版が完成できます」

 「現在はアメリカと日本だけのサービスですが、うまくいけば他の国にもサービスを提供できます。パートナーが見つかればサービスを展開していきたいと思っています」

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