Wedge REPORT

2019年10月3日

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 19歳でIPA(独立行政法人情報処理推進機構)の未踏スーパークリエータに認定された大澤昇平氏。東京大学・松尾豊研究室で人工知能とWebに関する博士号を取得後に、IBM東京基礎研究所でブロックチェーンの研究開発に参画。現在は東京大学特任准教授、株式会社Daisy代表取締役CEOを兼任している。Daisyは開発者が協力してAIを作るためのプラットフォームで、大澤氏の会社はこのAIを使って投資ファンドの試験運用中である。AIと投資の最前線とは、AIは機関投資家に勝つことができるのか?

大澤昇平氏(写真、小平尚典)

電卓、炊飯器、洗濯機も実はAIだった!

Q 世の中AIブームで、デジカメもエアコンもAI搭載を宣言しています。AIには自己学習してプログラムを進化させるイメージがありますが、実際どこまで実用化が進んでいますか?

大澤 AIの定義は広範囲にわたって「弱いAI」と「強いAI」という分類があります。弱いAIとは人間がやっていた作業を代行できる機能です。例えば電卓も人間の代わりに計算する機械なのでAIと言えます。電子計算機=人工知能とも言えます。つまりマイコンチップが入っている機械は全てAI搭載と言っても間違いではありません。エアコンのAIはセンサーとCPUの組み合わせですが、弱いAIに分類されます。強いAIについては後ほど触れますが、まだ実現していません。日本人はSFが好きなのでAIという文字を見ると、強いAIを連想してしまうのだと思います。

 AIの基準は時代によっても変化しています。かつては「Office97」から登場したイルカのアシスタントもAIと呼ばれていました。質問を入力すると類似した質問と解答の候補を表示させるだけのヘルプ機能ですが、当時はこれも立派なAIだったんです。AIのパラドックスというのがあって、中身が分かるとAIでなくなると言われています。スマホに使われている仮名漢字変換機能も当時はAIと言われていました。どんな技術が使われているか分からないと、これはAIということになります。タネが分かるとAIでなくなります。

話題のHFTの原理は1980年代から変わらない

Q つまり弱いAIの定義は人間の代わりに判断する機能なんですね。それでは金融界で話題のHFT(High Frequency Trading)は、AIがおこなっているのでしょうか?

大澤 HFTがやっていることは、アービトラージですね。1980年代からウォール街でおこなわれているトレード方法です。証券取引所と証券会社を専用回線で接続して株の売買をおこなっていました。その原理は取引所によって株価に差があることを利用します。簡単に言えば価格の安い取引所で買って、高く買ってくれる取引所に売るだけです。ほぼリスクがなく確実に儲かります。予測や分析の必要もありません。

 現在では価格差の大きな仮想通貨に用いられることが多いですね。日本はアメリカに25年ほど遅れてようやく機関投資家や富裕層の資金を使ったヘッジファンドが導入され、その中でHFTを取り扱うようになったのがここ5年ぐらいです。2018年にようやく金融庁がHFTの登録制度を導入しました。

 日本は金融のIT化が遅れているので、損益の発生しない、ダウンサイドリスクがゼロのHFTのような安全な取引からAIを導入してるのだと思われます。

 当時は人間がPCを使って売買していましたが、90年代に、これを自動化したのがHFTです。アービトラージはいち早く大きな価格差のある株を見つけて、大量に素早く売買する必要があります。売却までには価格変動リスクがあるので、早く売るのことも大切です。つまりHFTはAIが優秀かどうかではなく、1秒でも早く売買を成立させた方が勝ちという勝負です。それで証券取引所の近くの土地を確保して高速回線を引くという競争がおこっています。最終的には不動産の勝負になっているので、当社のテクノロジー企業としての優位性を発揮できないので、別のアプローチでAIを使った資産運用を考えています。

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